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Global Perspective 2013
2013年1月25日掲載

インド:モバイル学習と英語〜人気コンテンツABCD+Eへ

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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2013年1月、インドの通信事業者Airtelは携帯電話を活用した学習サービス「mEducation」を提供開始した(※1)。
 同サービスでは携帯電話のIVR(Interactive Voice Response:音声自動応答)やSMS(ショートメッセージサービス)を通じて学習することができる。IVR(電話)とSMSはどのような携帯電話でも搭載されているのでスマートフォンのような高機能端末である必要はない。英語学習やキャリアアップ関連など10種類の学習ができる。利用料金はそれぞれ異なるが英語学習では30日で30Rp(約50円)である。インドでの英語学習とモバイルコンテンツを見ていきたい。

インドの言語事情

インドでは他にも音声(IVR)やテキスト(SMS)を活用したモバイルでの英語教育サービスは多く提供されている。インドは世界でも英語を話す人口が多い国だが、インド人全員が英語を話せる訳ではない。インドで話されているのは一般的にヒンディー語(公用語)と英語だが、それ以外にも地域によって、それぞれのローカル言語がある。ローカル言語はインド国内だが大きく異なる。例えばタミル語を話すインド南部の人とベンガル語を話すインド北東部の人とでは言葉が通じない。そこでインド人同士でも英語で会話をしていることが多い。インド人でも英語ができないと就職にも不利だから英語学校もあり、多くのインド人が学習している。

公式統計によると、インドで母語として話される言語は(方言を含め)1,683あり、そのうち850言語が日常の社会生活で使用されているとのことだ。

(表1)インドでのローカル言語とその使用者数
言語 使用者数
ヒンディー語 約1億8,000万人
テルグ語 約7,000万人
ベンガル語 約6,700万人
タミル語 約6,600万人
マラーティー語 約6,500万人
ウルドゥー語 約4,600万人
グジャラート語 約4,300万人
カンナダ語 約3,500万人
マラヤラム語 約3,400万人
オリヤー語 約3,000万人
パンジャーブ語 約2,600万人
ボージュプリー語 約2,300万人
マイティリー語 約2,200万人
アワディー語 約2,000万人
アッサム語 約1,500万人
ハリヤーンウィー語 約1,300万人
マルワーリー語 約1,200万人
チャッティースガリー語 約1,100万人
マガヒー語 約1,100万人
ダッキニー語 約1,100万人

(出典:Ethnologueを元に筆者作成)

インドでは地方に行けば行く程、英語が通じないことが多い。英語を話せるのは学校で教育を受けた人たちだけであり、その多くは大都市に集中している。

インドは10億人以上の人口がいるが、流暢に英語を話すのは5%程度らしい。それでも5,000万人いる。インド人の話す英語は、ヒンディー語訛りが強く「ヒングリッシュ(Hinglish)」と呼ばれることもある。ヒンディー語に多いRの発音をそのまま読んだり、Sを「イス」と読むことが多く、さらにスピードが速く慣れるまでに苦労する。しかし慣れてしまえばあまり苦にならない。彼らも日本人の拙いジャパニーズイングリッシュを我慢して聞いてくれているのだからお互い様である。

人気コンテンツABCD、そしてE

携帯電話をプラットフォームとした英語学習サービスはインドで高い需要がある。インドの携帯電話契約者数は約9億。今後も携帯電話を活用した英語学習はインドで普及するだろう。
 米調査会社ニールセンの発表によるとインドでは携帯電話のうち80%がフィーチャーフォンでスマートフォンは10%程度と、スマートフォンの普及はまだ少ない(※2)。つまり日本や先進国のようにスマートフォンが普及していないので、音声やSMSといったプリミティブな配信方法での提供が主流である。そのような環境でも携帯電話向けに様々なコンテンツが多数提供されている。

そしてインドでの人気あるコンテンツは、「ABCD」と言われている。

  1. Astrology (占い)
  2. Bollywood(インド映画)
  3. Cricket(クリケット)
  4. Devotion(宗教)

これらABCDにインド人の生活習慣、趣味嗜好が伺える。携帯電話にSMSなどで「占い」が配信される。携帯電話を利用して「Bollywood(映画)」の情報を検索したり、待受け画面や着メロとして利用する。Bollywoodとは映画で有名な米国ハリウッドと、ボンベイ(現在のムンバイ)を合わせた造語。インドで一番人気があるスポーツ「クリケット」の勝敗結果ニュースを見る。宗教に関する名言や生き方の指針等が携帯電話に配信されたり、待受け画像にする。
  このような人気コンテンツ「ABCD」に続いて、「E」として「English」の英語学習も入ってくるだろう。

【参考動画】Bollywood(インド映画)のワンシーン

*本情報は2013年1月23日時点のものである。

※1 Airtel(2013), “Education is now available anytime, anywhere with Airtel mEducation,” Jan 2,2013
http://www.airtel.in/wps/wcm/connect/About%20Bharti%20Airtel/bharti+airtel/media+
centre/bharti+airtel+news/mobile/education-is-now-available-anytime-anywhere-with-airtel-meducation

※2 Nielsen(2013),” Smartphones: Still Room to Grow in Emerging Countries,” Jan 17, 2013 http://blog.nielsen.com/nielsenwire/consumer/smartphones-still-room-to-grow-in-emergi

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