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2013年9月5日掲載 |
シリア情勢をめぐって国際情勢の動きが目まぐるしい。日本でも多くのメディアで報じられているので、それについてはここでは割愛する。ここではシリア情勢をめぐるサイバー攻撃を見ていきたい。 シリア「SEA」からのサイバー攻撃シリアのアサド大統領を支持するオンライン活動家グループ「Syrian Electronic Army(シリア電子軍:SEA)」がアメリカ系大手メディアのWebサイトを次々とサイバー攻撃をしかけている。このようなサイバー攻撃はこれが初めてではない。シリアが内戦状態になってから幾度となく繰り返されてきた。以下は2013年8月に「SEA」が仕掛けたサイバー攻撃であるが、2013年5月にはファイナンシャルタイムズも攻撃されている。これらは氷山の一角であろう。 ●ワシントンポストやCNN等へのサイバー攻撃 ●ニューヨーク・タイムズやTwitterへのサイバー攻撃 サイバー攻撃に対するアメリカの危機感2013年8月27日、アメリカのナポリターノ米国土安全保障長官は「アメリカは将来、サイバー攻撃で生活や社会、経済に大きな混乱が生じる事態に直面するだろう」と述べて警告を発した(※4)。 またアメリカ政府はシリアのアサド政権に対する軍事攻撃が行われた場合の報復として、シリア関係者によるアメリカ企業へのサイバー攻撃が相次ぐ可能性があると報じられている(※5)。サイバー攻撃に対する防衛計画は米国防総省を中心に広範囲に準備されているが、SEAが8月になってから立て続けにアメリカの大手メディアのサイトへサイバー攻撃を仕掛けたことから、緊急性が強まっている。チャートフ元米国土安全保障長官は「Cyber 9/11」とサイバー攻撃を例えて国家安全保障と民間の安全確保の境界線が崩れつつあると指摘している。 サイバー攻撃対策の重要性サイバー攻撃によって、大手メディアのサイトを乗っ取っとりページ(コンテンツ)の改竄を行うことによって誤った情報発信を行うことが可能になるだろう。また情報窃取による機密情報の漏えいやシステム破壊による社会の混乱誘因なども考えられる。情報通信技術の発展とともに、あらゆる社会基盤が情報通信技術を基盤にしたサイバースペースに依拠するようになり、そこの脆弱性を突いたサイバー攻撃によって、相手にダメージを与えることができるようになった。今回のアメリカ大手メディアへのサイバー攻撃は、既存のサイバースペースの脆弱性が白日の下にさらされたが、もう一方で「Syrian Electronic Army(シリア電子軍:SEA)」のサイバー攻撃力も明るみになった。「SEA」がどの程度の規模なのか不明だが、これだけのサイバー攻撃を仕掛けることが可能なのは相当な技術力を有するのではないだろうか。短期間に多くのサイトへサイバー攻撃を仕掛けられたことに対するアメリカの強い危機感も上述のように多くの報道から伺える。 これからも情報通信技術の発展は続き、サイバースペースへの依拠は続くことだろう。サイバースペースには未知の脆弱性が多く潜んでいる。それらを突いたサイバー攻撃への対策はこれからも国家の安全保障の延長として防衛すべき重要なドメインとなるだろう。アメリカとシリアの現実の国家間関係を反映していることであり、さらにアメリカには世界中の人が見る大手メディアもあるし、サイバースペースに世界で最も依拠している国であることから、このような際にはサイバー攻撃の標的にされやすい。しかしこれはアメリカだけの問題ではなく、世界各国でサイバー攻撃に対する対策は行っておいた方がよいのだろう。 【参考動画】 *本情報は2013年9月1日時点のものである。 ※1 ABC(2013) Aug 15, 2013 “Washington Post Hacked, Syrian Electronic Army Claims Responsibility” ※2 Washignto Post (2013) Aug 15,2013 Editor’s Note ※3 ABS(2013) Aug 28,2013, “Syrian group behind cyber attacks vs Twitter, NYT?”http://www.abs-cbnnews.com/business/08/28/13/syrian-group-behind-cyber-attacks-vs-twitter-nyt ※4 he HILL(2013) Aug 27, 2013 “Napolitano warns large-scale cyberattack on US is inevitable” ※5 Bloomberg(2013) Aug 28, 2013 “Banks, Utilities Seen as Targets of Syrian Cyber-Attacks” |
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