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2013年9月12日掲載 |
日本だけでなく海外でも歩きながらスマートフォンを触っていて自動車と接触したり、人や物体にぶつかって事故を起こす「歩きスマホ」は問題になっている。そのような中でアメリカのフィラデルフィアでは1年以上前にスマートフォンや携帯電話を操作しながら歩く人専用のレーンを2012年4月1日(エープリールフール)から1週間トライアルを行った。 フィラデルフィア市がエープリールフールに導入した「e-lane」2012年4月1日のエープリールフールに、アメリカのペンシルバニア州フィラデルフィア市において市当局がイニシアティブをとって「e-lane」を1週間、試験的に導入した。「e-lane」とは、道路を歩きながらスマートフォンを利用したり、ゲーム機で遊んだり、ウォークマンを聞きながら歩く人たち専用の道路(レーン)で、普通に歩く人たちにぶつからないことを目的としている。 フィラデルフィア市長のMichael A. Nutter氏は「フィラデルフィア市民はiPhoneやらBlack Berryに忙しすぎて、道路を歩く時も上を見る余裕もないから、彼らのために専用道路を作ってみた」と皮肉を込めたコメントをしている(※1)。 またフィラデルフィア市の交通局の副長官のRina Cutler氏は「フィラデルフィアでは4時間に1人の歩行者が交通事故にあっている。幼稚園で最初に習うことは、信号を渡る時は右と左を確認すること、(道路を勝手に横断しないで)信号を使うこと、信号を守ること、歩く時は音楽や電子デバイスを切って前を見て歩くこと。そして1日の終わりには無事に家に帰ることである」とこちらも多くのフィラデルフィア市民の「歩きスマホ」を懸念したコメントを発している(※2)。 これはエープリールの「余興」なのか「本気」なのか不明である。フィラデルフィア市民の中には本気で導入するものだと思っていた人も多くいたそうだ。 日本でこのような専用道路を導入することは自治体やら役所の許認可が必要であろうから、相当に大変であろう。そしてその目的が身体の不自由な方や自転車、バイクの専用道路ではなく、歩きながらスマートフォンや携帯電話、ウォークマンを利用するための専用道路の新設となったら、相当な議論が巻き起こるであろう。 【フィラデルフィアでの「e-lane」とそれについて語る市長(2012年4月1日)】 (図1)フィラデルフィア市での「e-lane」専用道路の看板 ![]() (出典:The Blaze) アメリカ版「歩きスマホ」注意喚起の看板アメリカでは「歩きスマホ(携帯)」で怪我した人は2004年には559人だったが、2010年には1,506人に増加しており「歩きスマホ」は深刻な社会問題になっている。 ニュージャージー州のフォートリーでは2012年から歩行中にスマートフォンや携帯電話を操作すると違反切符を切られ85ドルの罰金が科せられるそうだ。人口35,000人の小さな町であるフォートリーでは2011年には74人の歩行者が交通事故に遭い、2人が死亡、2012年1月から3ヶ月で23人の歩行者が交通事故に遭い、3人が死亡した。そのため地元警察が2012年3月からパンフレットを配布するなどして注意を促していたが、効果が上がらないため違反切符と罰金を導入し、2012年3月までに117人が違反切符を切られたそうだ(※3)。このような「歩きスマホ」の規制導入に向けた取組みはアメリカの多くの街や州で議論になっているようだ。 日本でも地下鉄やJRの駅で「歩きスマホ」の注意喚起のポスターを多く見かける。2013年8月にはNTTドコモも東京の新宿駅で階段に巨大な「歩きスマホ」のマナー広告を出していた。「危険です、歩きスマホ。(本人は、この広告見ないだろうけど)」というメッセージとともに、階段の両側の壁には「この広告には気づかなくても、みんなの冷たい視線には気づいてほしい」と書かれていた。 アメリカでも多くの注意事項を表した看板を街中で多く見かける。「歩きスマホ」の注意喚起をした看板やポスターも多くある。「Facebookのアップデートは待っていてくれるよ」とか「メッセージを送るのは信号を渡ってから」(オハイオ州立大学)、「上を見て」(デラウェア市)といった看板やポスターで注意喚起を呼びかけている。 (図2)様々な「歩きスマホ」に対する注意喚起の看板やポスター ![]() 「歩きスマホ」を英語で言うと「Texting While Walking (TWW)」余談だが、英語で「歩きスマホ」のことを「Texting While Walking(TWW)」という。「TWW」という3文字の略称語もよく見かける。 Text(テキスト)、つまり元は歩きながら携帯電話でSMS(ショートメッセージ)に熱中していて注意散漫で事故につながっていたからだろう。「Text(ショートメッセージ)」であって「call(電話)」ではないのだ。たしかに電話をしている分には耳に端末をあてて、目は前を見ていることが多いから事故に繋がることも少ないせいかもしれない。上の注意喚起の標識も「電話」を禁止するものではなく、画面を見つめていることを注意していることからも、その様子がうかがえる。 いずれにせよ、「歩きスマホ」の問題は日本だけの問題ではない。アメリカでは日本よりも先に問題になっており、多くの対策が講じられている。 *本情報は2013年9月6日時点のものである。 ※1 NBC(2012) “April Fool's Day Joke Raises Awareness on Distracted Walking” ※2 Mayors Office of Transportation and Utilities(2012), “The E-Lane Pilot: Sidewalk Space for Distracted Walkers” ※3 ABC(2012) may 14, 2012 “Texting While Jaywalking? Fort Lee, NJ, Issues Tickets” http://abcnews.go.com/blogs/headlines/2012/05/texting-while-jaywalking-fort-lee-new-jersey-issues-tickets/ |
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