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Global Perspective 2013
2013年11月11日掲載

ジャカルタ交通渋滞対策「3in1」

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2013年11月2日のAFPの報道によると、世界でも最大級の交通渋滞都市であるインドネシアの首都ジャカルタにおいてTwitterを通して情報共有や相乗り募集をしていると報じた。ジャカルタの渋滞は本当に酷いものである。日本から到着しても夕方のラッシュでホテルに到着するまで数時間かかることもある。ジャカルタは「Twitterのつぶやき」も世界で一番多く、そのTwitterを活用して渋滞対策をしようとしている人たちがいる。

渋滞都市ジャカルタ、Twitterで情報共有や相乗り募集

AFPの短い記事なので、以下に引用しておきたい(※1)。記事のタイトルは「渋滞都市ジャカルタ、Twitterで情報共有や相乗り募集」である。ジャカルタでの交通渋滞とそれに向けた取組みが伝わってくる。

(下線筆者)

【11月2日 AFP】激しい交通渋滞で知られるインドネシアの首都ジャカルタでは、マイクロブログのTwitterを利用して渋滞情報を共有したり、相乗り通勤の相手を探す人が増えている。

市場調査会社フロスト・アンド・サリバン(Frost and Sullivan)の2011年のデータによると、通勤の際に世界で最も不快な都市はジャカルタだった。車やバイクでの通勤に最大5時間かかることも珍しくない。

一方、ジャカルタはツイート数の多さでも世界一だ。こうした面に注目し、ジャカルタの交通渋滞解消を目指すオンラインツール開発を先駆けたのが、IT起業家のヘンドリー・ソエリスティヨ(Hendry Soelistyo)氏だ。同氏は4年前、ウェブサイト「レワットマナ」(lewatmana.com)を立ち上げ、Twitter公式アカウントを設けて通勤者が交通情報をリアルタイムで共有できるようにした。同氏はAFPに「インドネシア人はフェイスブック(Facebook)やTwitterで絶えず情報を更新する。だから交通渋滞の情報も共有したらどうかと考えた」と話した。

レワットマナでは渋滞情報の他、豪雨で冠水した道路や頻発するデモの影響が出ている地域などついても情報を提供する。情報源はユーザーからの投稿や、市内に設置されたカメラ100台から送信される映像。このサービスは大成功で、1か月のツイート数は1万4000件、フォロワー数は20万人前後に上っている。

Twitterを利用した渋滞対策には「Nebengers」(ヒッチハイカーの意味)と呼ばれる相乗りコニュニティーもある。システムの考案者、アンドレアス・アディタヤ・スワスティ(Andreas Aditya Swasti)氏は「Nebengersは仮想の自動車ターミナルのようなもの。人の車に乗せてもらって通学、通勤できる」と説明した。同乗者を募る人は出発2時間前に情報を公開することになっている。

インドネシアでは見知らぬ人を車に乗せることはまれだが、Nebengersの公式Twitterのフォロワー数は4000人前後、実際のサービス利用者は400人を超える。

日本の国際協力機構(JICA)によると、2000〜2010年までの10年間で、ジャカルタのバイク交通量は4.6倍に、車は1.6倍にそれぞれ増えたという。

交通渋滞都市ジャカルタ名物「3in1」

ジャカルタの交通渋滞は世界中でも相当に酷いものである。渋滞のせいで待ち合わせに遅刻することもしばしばあるし、渋滞を言い訳にすれば、相手も仕方がないかと諦めるしかない。ジャカルタでは移動手段の大半は自動車かバイクであり、あらゆるとこで常に渋滞している。「Transjakarta」という現地の公共バスをだと専用レーンがあるので、バスで行けるところはそれで移動するようにしている。バス車内は混雑していることもあるが、交通渋滞を回避できるので非常に快適である。しかし、それでもジャカルタ市内での移動の大半は自動車である。

そのようなジャカルタの交通渋滞を回避するために、朝夕の通勤時間で特定の区間では、1台の自動車に3人以上乗っていないといけない「3 in 1」というのがある。1990年代半ばくらいから導入されたものだと記憶している(間違っていたら、すみません)。ジャカルタでは通勤時間は多くの自動車が運転手1名と乗客1名という2名構成が多い。また1人で運転している人も多い。そこで、ジャカルタでは朝、夕になると「3 in 1」の「もう1人」や「あと2人」の乗客になるためにジャカルタの人らが指を上げて、自動車に乗っていく。そして「3 in 1」の区間を終わると、車から降りて、公共バスで家に帰る。または次の車を探して家路に戻る。1人で乗る場合は指を1本立てている、また子供(赤ちゃん含む)などを連れて2人で乗るときは指を2本立てて、車にアピールしている。この「3 in 1」の仕事は、朝と夕に自動車に乗るだけなので子供や主婦などにとっては良い小銭稼ぎになる。1回の乗車でおよそ20,000〜30,000ルピア(約200円程度)である。かつて10年前は1,000ルピア程度だったことからインドネシアの物価上昇を感じる。

(ジャカルタの街角)
「3 in 1」のお知らせビルボードとその下で、車を待つインドネシア人。
携帯電話やスマートフォンを見つめている人はいない。

小さい子供を連れて「2人乗れますよ」とアピールするために2本指を立てる。

夕方の小遣い稼ぎ。

(筆者撮影)

彼らは「3 in 1」の自動車に乗るためにTwitterやネットなどは活用していない。朝夕に道路に立ち、1人または2人しか乗っていない自動車が来るのを、指を立てながら待っているだけである。運が良ければ1日に何回も乗車して小銭を稼ぐことができるし、運が悪い日は乗車することもできないこともある。しかも自動車が通る道路で立っているため、そこで携帯電話やスマートフォンを触ることは命にかかわる危険な行為である。帰りのバスや車が捕まらなくて、家族や友人にバイクで迎えに来てもらったり、スコールで雨宿りするために帰れない時にSMS(ショートメッセージ)を送信する程度である。

筆者は1986年からジャカルタを知っているが、昔からジャカルタの交通渋滞はひどかったが、近年では特にバイクの増加が目立っている。そして「3 in 1」は面倒だということで、「3 in 1」の規制対象にならない道路の渋滞はますます酷いことにもなっている。

今後はTwitterなどのサービスが「3 in 1」の効率化につながるのだろうか。それよりも、ジャカルタの交通渋滞そのものを早急に解決してもらいたいものである。そしてインドネシア当局側もこのように交通渋滞回避策として「3 in 1」規制を作ったとしても、それによって本当に国家の税収が増えているのかどうかを検討する必要があるのではないだろうか。

【参考動画】
交通渋滞は新たなビジネスチャンスでもある。物売りや交通整理、車の管理など様々な雇用を創出している。

*本情報は2013年11月5日時点のものである。

※1 AFP(2013)「渋滞都市ジャカルタ、Twitterで情報共有や相乗り募集」(2013年11月2日)
http://www.afpbb.com/articles/-/3002562

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