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Global Perspective 2013
2013年11月19日掲載

フィリピン:台風30号の被害に対する通信事業者の取組み

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2013年11月8日にフィリピンを台風30号が襲ったことは日本でも多く報道されている。国家災害対策本部は2013年11月16日、死者は3,637人に上り、1,186人が行方不明になっていると発表した。日本からも自衛隊の医療チームなど多くの支援が行われている。
日本の通信事業者3 社からもフィリピンでの台風30号への被災者に対する様々な支援が発表された(※1)。

日本の通信事業者のフィリピンへの支援策

【KDDI】
 KDDIは2013年11月12日19時〜2013年12月20日12時の間、義援金サイトにて「オリジナルケータイ用壁紙」を販売。売上は全額日本赤十字社に寄付する。価格は105円(税込)〜5,250円(税込)から選択できる。

【ソフトバンクモバイル】
 ソフトバンクモバイルは「東南アジア台風30号 被災者支援金プロジェクト」を開始。2013年11月15日13時〜2013年12月20日16時の間、「ソフトバンクかんたん募金」を通じて、義捐金を受け付ける。携帯電話からまとめて支払い、クレジットカード、SoftBankマネー、ソフトバンクポイントのいずれかによる「オンライン決済」、専用特番(*5577)からの募金が行え、それらは特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォームへ寄付される。また、ソフトバンクの携帯電話でフィリピンから送信するSMS(ショートメッセージ)と、日本からフィリピンへ送信するSMSの双方を無料化することも発表した。対象となるSMSは日本時間の2013年11月8日0時にさかのぼり、2013年12月7日23時59分までの間に送信されたものが対象となる。

【NTTドコモ】
 NTTドコモは2013年11月15日15時〜2013年11月26日12時の間、募金を受け付ける。ドコモ口座を利用した送金のほか、ドコモポイントを100ポイント単位で寄付することができ、それらは日本赤十字社、特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォームへ寄付される。
 また海外送金サービス「docomo Money Transfer」におけるフィリピン向けの送金手数料の無料化も併せて実施する。2013年11月15日15時〜2013年12月31日15時の受付期間にフィリピンへ送金指示した個人間送金を対象に、送金手数料の1,000円をドコモ口座に還付する。

このように日本の通信事業者では携帯電話を通じての募金、フィリピンのSMS送受信の無料化、送金手数料の無料化などの施策でフィリピンへの支援を行っている。

震災後の通信事業者の支援

海外の通信事業者でもSMSを通じた募金などはよく行われており、今回のフィリピンの台風被害に対しても多くの通信事業者が募金を行っている。またフィリピン人は海外での移民労働者(Overseas Filipino Worker:OFW)が約1,300万人いる。そのため母国フィリピンとのコミュニケーションを行うためにアメリカのAT&T、ベライゾン、オーストラリアのテルストラなどはフィリピンとの電話、SMSを無料化している。このような施策は国内外を問わずによく行われており、2011年3月11日に東日本大震災に見舞われた時には、日本への電話、SMSも無料化されたり、日本への募金として多くの支援金がSMSを通じて世界中から集まった。

フィリピンの通信事業者PLDT、SMARTなどはアメリカ国際開発庁(USAID)や携帯電話通信事業者団体GSMAなどと提携して、「helpPH(http://help.ph/index.html)」というサイトを立ち上げて、世界中にいるフィリピン人(OFW)や現地人らに携帯電話を通じた募金を呼びかけている。

(図1)helpPH

(図1)helpPH

また通信事業者PLDTは被災地で無料での電話、携帯電話充電サービス、インターネットアクセスなどを提供している。

(図2)被災地に設置されたPLDTによる無料の電話、携帯電話充電ができる場所。「Libreng tawag」とはタガログ語で「Free Call」の意味。

(図2)被災地に設置されたPLDTによる無料の電話、携帯電話充電ができる場所。「Libreng tawag」とはタガログ語で「Free Call」の意味。

さらに国際電気通信連合(ITU)では衛星電話50台をフィリピンで貸出を開始した。陸上の基地局が台風で破壊されて機能しなくとも衛星であれば利用できる。ITUの衛星電話は東日本大震災の時に日本でも貸与された。

世界中で震災など自然災害が発生すると、国内外の通信事業者は自社のユーザーに対してSMSを通じた募金や被災地の国との通話、SMSを無料にするなどの施策を通じて支援を行っている。震災後に携帯電話が繋がらないことは、日本でも周知の通りであり、今回のフィリピンでも台風後の輻輳と基地局の破壊などによって今でも不通の地域も多いとのことである。例えば、フィリピン中央部の3都市ではカバレッジのうち約15%が台風の影響を受けたとSMARTのG. Pena氏(Head of technology services)はコメントしている(※2)。またフィリピンの通信事業者SMART、Globeともに基地局の復旧は台風で影響を受けた電力供給に依拠しているとのことである。つまり破壊された基地局を復旧したとしても、停電が回復を待たないと基地局として機能しない。

震災後のコミュニケーションの確保は不可欠である。通信は重要インフラであるということを改めて認識させられる。諸外国とフィリピンの通話、SMSが無料になったとしても、フィリピンでのネットワークが修復していない状況では通話、SMS送受信ができないのでは意味がない。早急の回復が望まれる。

最後になりましたが、今回フィリピンにおいて被害に遭われた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

【参考動画】
まずは水、食料、避難所が必要であることが伺える(2013年11月12日)

*本情報は2013年11月16日時点のものである。

※1 KDDI(2013年11月13日)「フィリピン・台風ハイエン(台風30号)被災者救援金の募金開始について」
http://www.au.kddi.com/information/topic/mobile/20131113-02.html

ソフトバンクモバイル(2013年11月15日)「東南アジアで発生した台風30号に伴うSMS送信料無料化措置について」
http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2013/20131115_02/
ソフトバンクモバイル(2013年11月15日)「東南アジアで発生した台風30号の被災者に対する支援金受け付けについて」
http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2013/20131115_01/

NTTドコモ(2013年11月15日)「フィリピン台風被災地支援募金およびフィリピン向け送金手数料の無料化について」
http://www.nttdocomo.co.jp/info/notice/page/131115_03_m.html

※2 “Govt, Smart race to normalize communications to ensure rapid response to victims”
http://www.interaksyon.com/article/74451/govt-smart-race-to-normalize-communications-to-ensure-rapid-response-to-victims

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