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2013年12月13日掲載 |
イスラエル電力公社(IEC)は1時間に1万回ものサイバー攻撃を受けているらしい。イスラエルは世界でも最もサイバー攻撃の標的にされている国であり、IECはその中でもさらに多くのサイバー攻撃の標的とされているとのことだ。そのIECは「サイバージム(Cyber Gym)」というサイバー攻撃対策の防衛訓練を行う施設を開設し、そこではイスラエル国内の企業の社員がサイバー攻撃対策の訓練を受けていると報じられている(※1)。研修を受けているトレーニーのほとんどがエネルギーやインフラ関連企業のIT部門で、トレーニーはリアルタイム行われるハッキングを経験して、サイバー攻撃からの防衛技術を学んでいる。 世界で最もサイバー攻撃が多いと言われているイスラエルにとって、サイバー攻撃とその防衛対策は重要な問題である。イスラエル軍のBenny Gantz参謀総長は、イスラエルが地上とサイバースペースの両方で同時攻撃にさらされるという将来の戦争の展望を示し、「イスラエル国民の日常生活がサイバー攻撃によって混乱する恐れがある。例えば信号機が止まったり、銀行システムが麻痺するなどだ」と述べた(※2)。 イスラエル電力公社(IEC)では現在はイスラエル国内企業の人のみを対象に訓練を実施しているが、将来はアメリカや欧州、アジアの企業にも提供拡大を行っていく可能性があるとのことだ。 サイバー攻撃防衛対策のナレッジシェアイスラエル電力公社(IEC)は「世界中から」サイバー攻撃を受けていると述べ、具体的な国名は指摘していないが、1時間に1万回ということは常時サイバー攻撃に晒されているような状況であろう。その分、サイバー攻撃防衛に関するあらゆるノウハウや傾向、対策も蓄積されていることだろう。IECに蓄積されたサイバー攻撃防衛対策は、まさに常時サイバー攻撃の標的として晒されている経験から蓄積されたものであるからリアリティがある。セキュリティ会社が研究やヒアリングなどから得たものとは異なりまさに実戦から得た知識、ノウハウ、スキルであろう。そのようにIECに蓄積された知識、ノウハウ、スキルをイスラエルの他企業に対しても共有し、訓練を行うことによってイスラエル全体のサイバースペースの防衛にもつながる。サイバースペースは情報通信技術という概ね共通したシステム基盤の上に成立する空間であることから、脆弱性とそこを突いたサイバー攻撃も共通していることが多いから、サイバー攻撃の経験、ノウハウ、対策スキルは共有が可能である。 イスラエル電力公社(IEC)は自らのサイバー攻撃の被害経験とその知識、ノウハウ、対策スキルをイスラエル国内の他企業に展開し、イスラエルのサイバースペースを強固なものにすることに貢献しようとしている。まさに「転んでもただでは起きぬ」といったところであろう。 *本情報は2013年12月11日時点のものである。 ※1 “Israeli hacking school trains cyber warriors” (Dec 2, 2013) ※2 the armed forces chief of staff painted a grim picture of a future war in which the Jewish state comes under simultaneous attack both on the ground and in cyber space. "It is possible that there will be a cyber attack on a site supplying the daily needs of Israeli citizens; that traffic lights would stop working or the banks would be paralysed," Lieutenant General Benny Gantz told a security conference in October. |
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