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2013年12月20日掲載 |
電話番号が同じままで携帯電話会社を変更することができるMNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティ)は日本ではお馴染みである。各通信事業者がMNPで顧客獲得に躍起になっている。MNPで自社に来てもらうために各社が多くのキャンペーンや料金競争を行っている。MNPを導入している先進国でもそのような光景はよく見られる。それでは新興国、途上国ではどうだろうか。 GSMAが新興国、途上国のMNPに関する調査結果を2013年11月25日に発表した(※1)。それによると新興国、途上国でMNPを導入しているのはまだ25%にすぎず、将来導入を予定しているのも15%程度であるとのことである。つまり新興国、途上国の60%はMNPを導入していない、もしくは将来も導入する予定がないとのことである。また同調査によると新興国、途上国の中でも大国であるインド、ブラジル、ナイジェリア、トルコ、メキシコ、南アフリカではMNPが導入されているが、通信事業者、利用者ともに積極的ではないとのことである。 (図1)新興国、途上国におけるMNPの導入状況 ![]() (出典:GSMA) ![]() (出典:GSMA発表資料を元に筆者作成) 新興国で進まないMN:その背景(1)手続きの煩雑さ 新興国では手続きがさらに煩雑であることが多い。それは通信事業者間での番号のやり取りに時間がかかることもあるし、利用者の手続きが面倒なこともある。もちろん電話番号の悪用防止のために煩雑な種類提出やらの手続きが必要な国も多いので仕方がないのだが、それでも利用者から見たら、そこまでして電話番号そのままで違う会社にするモチベーションは出てこないだろう。一方で手続きが煩雑でないガーナでは5分もあればMNPが完了すると言われている。 (2)大量に流通するプリペイドSIMカード:利用者は電話番号に固執しない また最近ではWhatsApp、Viber、WeChat、LINEのようなメッセンジャーアプリも新興国では多く利用されており、ますます利用者にとっては電話番号へ固執する傾向は小さくなっている。 今後も新興国では普及が期待できないMNP例えば、インドでは当局TRAIの発表によると2013年10月の1カ月間でのMNP利用者は230万である(※2)。多いように見えるが、インドでの携帯電話加入者数が約8億7,000万なので、全体の0.3%にすぎない。特に最近のインドでは携帯電話の新規加入の審査も厳しくなっていることからMNPはますます敬遠されている。なお2011年1月にMNPが開始されて2013年10月までに累計で約1億400万しかMNPを利用していない。これも数字だけ見ると多いように見受けるが、毎月MNPを利用しているのは全加入者のうち0.5%程度である。今後MNPを利用する人が急増するとは考えにくい。 このように、手続きの煩雑さと大量に流通しているプリペイドSIMカードが中心の新興国市場においては今後もMNPが活性化し一般的に普及することは考えにくいであろう。
※1 GSMA(2013) Nov 25, 2013 “Majority of developing world mobile markets have no plans for MNP” http://www.mobileworldlive.com/majority-developing-world-mobile-markets-plans-mnp ※2 TRAI (2013) Press Release on Telecom Subscription Data as on 31st October,2013 (P8) |
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