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Global Perspective 2013
2013年3月5日掲載

発展途上国の女性と携帯電話「mWomen」

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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2013年2月、バルセロナで開催されているMobile World Congressにおいて業界団体GSMA(GSM Association)が様々なモバイル分野での優れた商品やサービスをジャンルごとに表彰している(※1)。その中で、モバイルを活用した新興国の女性向けサービスで優れたサービスを表彰する「GSMA mWomen Best Mobile Product or Service for Women in Emerging Markets」がある。

GSMAが推進する「mWomen」

GSMAでは新興国の女性が携帯電話を活用して自立していくための支援を目的として「mWomen Programme」を立ち上げている。
 民間企業や政府や援助機関などの公的機関と連携し、新興国においてモバイルを通じて女性の社会進出や女性向けのサービス、商品の推進を支援している。また携帯電話保有のジェンダーギャップの解消にも取り組んでいる。 mWomenプログラムを通じてGSMAは、モバイル業界が女性をターゲットとして更なる投資を行うこと、新興国の女性を対象にした付加価値サービス(VAS)の提供、女性が携帯電話をもっと利用することの促進を目指している(※2)。さらに2014年までに1億5,000万人の新興国の女性に携帯電話を普及させることを掲げている。GSMAでは新興国で女性が携帯電話を持てないことは通信事業者にとって130億ドルの収入機会を損失していると推計している。

イラクAsiacellの「 Almas Line」

2013年に「GSMA mWomen Best Mobile Product or Service for Women in Emerging Markets」にはイラク第2の通信事業者Asiacellが提供している「Almas Line」が選ばれた。
 「Almas Line」はAsiacellの女性加入者専用のサービスで、一般的な料金プランよりも安く設定されていたり、女性向けコンテンツの配信(美容、エチケット、料理、健康、占いなど)を行ったり、20人まで着信拒否設定ができる。SIMの販売時に女性であることを確認して販売している。
 GSMAによると、2011年にはイラクの携帯電話加入者で女性の割合は20%しかいなかった。Asiacellが2011年4月に「Almas Line」サービス提供を開始するとイラク女性の約180万人が加入した。イラクの全携帯電話加入者は約2,700万で普及率は約83%である。

発展途上国の女性と携帯電話

日本や欧米のような先進国にいると女性でも女性が携帯電話を保有していることが当たり前である。しかし世界の発展途上国や新興国ではまだ女性というだけで虐げられており、教育を受けられない、男性と平等に仕事に就けない、携帯電話を保有できないという環境にいる女性が多い。2010年時点で、発展途上国で携帯電話保有者29億人のうち、14億人が男性で、女性は11億人で、3億人の女性が携帯電話を保有していないとのことである。

現在、GSMA以外でも世界の通信事業者やNGO、援助機関などが発展途上国の女性に携帯電話を保有してもらうことで、金融サービスや農産物価格や健康に関する情報発信、情報取得による収入機会の増加を目指して取り組んでいる。
 2012年のGSMAの「mWomen」はUAEの通信事業者Etisalatがアフリカのルーラル地域で妊娠している女性向けに情報配信を行う「Mobile Baby」が受賞している。このような発展途上国の女性を対象にした携帯電話サービスは増加しつつある。

他にもインドでは多発するレイプ事件を受けて、通信事業者Airtelは「Emergency Alert Service」を2012年12月に導入した。これは緊急時に家族や友人などに危機を知らせるSMSを送信し連絡することができるサービスである。

「女性であるということだけで携帯電話を保有できない」という環境が早期に解決できるようGSMAや各国の事業者らの取組みが今後も期待される。

(参考)

【参考動画】「Asiacell for Almas Line」

*本情報は2013年3月3日時点のものである。

※1 Global Mobile Awards 2013 http://www.globalmobileawards.com/winners-2013
なお、新興国の女性向け携帯電話サービスが対象であるから日本や欧米先進国の女性向けサービスは審査対象外である。

※2 mWomenの目的(原文)
・Encourage industry to serve resource-poor women
・Increase availability of life-enhancing value-added services
・Promote solutions to women’s barriers to usage.

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