アフリカと農業

2013年3月1日、アフリカ17カ国で事業を展開する通信事業者Airtel Africaは国連の機関UN Women（United Nations Entity for Gender Equality and Empowerment of Women：ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関）と提携してアフリカの女性農業従事者向けの情報配信システムを提供していくことを発表した 。アフリカでの農業について考えてみたい。

Airtel Africaが提供する「Farmer’s Information System」

Airtel AfricaとUN Womenはアフリカの女性農業従事者向けに情報配信システム（「Farmer’s Information System」）を構築し、情報提供を行っていくことでMoU（Memorandum of Understanding）を締結した。提携期間は2年間。リアルタイムな天候情報、地域毎の税制や規制に関わる政策情報などを配信していく。またAirtel Africaはメッセ―ジサービスやCUG（クローズド・ユーザ・グループ）機能の提供も行い、アフリカの女性農業従事者が効率よく情報収集が出来るようになり、生計を立てていくことを支援していく。

　「女性のエンパワーメントは経済発展にとっては不可欠であり、特に地方や農業に従事している女性には重要である。携帯電話を通じてジェンダーの平等に繋がることができるように貢献していく」とAirtel AfricaのChief Marketing Officer 、Andre Beyers氏は述べている（※1）。

Airtel Africaはアフリカ17カ国（ケニア、ガーナ、シエラレオネ、タンザニア、ザンビア、ウガンダ、マラウィ、コンゴ民主主義共和国、ニジェール、ブルキナファソ、コンゴ、ガボン、チャド、マダガスカル、ナイジェリア、ルワンダ）で事業展開を行っている。

アフリカと農業

アフリカでは農業従事者の70％が女性であり、全食糧の90％を女性が生産している。それにも関わらず、女性は男性と比べると入手できる情報が非常に限られている。ジェンダー平等は国連のミレニアム開発目標（MDGs）の1つにもなっている。
　アフリカをはじめとする新興国では女性の方が農業に多く従事している。男性は農業に従事するよりも、男性は仕事を探して都会に出ていってしまう。特に若い男性が農業に従事しなくなっている。農業や肉体労働に従事するよりも都会に出て仕事をしたい、という思いが強いのだ。しかし、実際に都会に出ても仕事に就ける人は少なく、都会の治安を悪化させることになっていることが多い。

世界銀行は2013年3月4日、アフリカの農業の現状と課題について分析したレポート”Growing Africa: Unlocking the Potential of Agribusiness”を発行した（※2）。政府による規制緩和などの取り組み強化を行えば、アフリカの農業市場は中産階級の需要があるため現在の3倍の規模に成長できるとしている。　アフリカでは経済成長に伴い、高価で品質の良い食糧を買い求める中産階級が増えている。現在アフリカ全体で農業市場は年間3,130億ドルの市場規模だが、2030年には１兆ドル規模まで拡大するとの見通しを示している。

このような「アフリカの胃袋」を支えている農業従事者の70％が女性であり、彼女らは正しい情報にアクセスできないといった問題を抱えている。
　携帯電話を活用したAirtel Africaの取組みもアフリカの農業生産向上に向けた1つの施策になる。2030年までにアフリカの農業市場が1兆ドルに達するためには、ジェンダー平等の問題だけでなく、労働問題や技術開発など解決しなくてはならない問題が物凄くたくさんある。
　そしてグローバル化が進展した現代社会において、農業の問題はアフリカだけの問題ではなくなってきている。現在のアフリカでは農業従事者の70％が女性だが、彼女らが農業に従事しなくなったら「世界の胃袋」は誰が支えてくれるのだろうか。

【参考動画】UN Womenの活動を紹介するビデオ

【参考動画】世界銀行：アフリカでの農業が急成長することを伝えるビデオ

＊本情報は2013年3月15日時点のものである。