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Global Perspective 2013
2013年4月1日掲載

親日国モンゴルの携帯電話事情

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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2013年3月30日、31日に安倍首相が日本の総理大臣として7年ぶりにモンゴルを訪問した。訪問に先立つ3月29日付のモンゴル主要紙に両国関係の更なる発展を目指すメッセージを寄稿した。寄稿した文章(日本語)は首相官邸のサイトに掲載されている。

日本とモンゴルは1972年に外交関係が樹立され、2010年には「戦略的パートナーシップ」の構築を共通の外交目標として掲げている。安倍首相は、両国関係を支えているものを自由と民主、平和、助け合いの「3つの精神」であると位置付けた。また「政治・安全保障分野の協力」、「経済関係の更なる促進」、「人的交流・文化交流の活性化」の3分野で協力を推し進め、「戦略的パートナーシップ」を加速的に推進していくことを強調した。 モンゴルは世界でも有数の親日国家である(※1)。本稿では親日国家モンゴルの携帯電話事情について見ていきたい。

モンゴル携帯電話事情

モンゴルの人口は約280万人で、携帯電話契約者数は約295万(普及率105%)。これはプリペイドが主流の同国において1人で複数枚のSIMカードを保有しているから人口を超えている。モンゴルは人口密度が1kuあたり2人である。国土は大草原が広がっている。そのためネットワーク・カバレッジとデジタル・デバイドが問題になっていた。とはいえ、首都ウランバートルに約128万人(人口の約46%)が集中しているため、基地局設置や端末販売がウランバートル中心になってしまうのは仕方がなかった。

モンゴルには日本の県にあたるアイマグが21あり、県には郡にあたるソムが347ある。ソムの30%以下しか満足にネットワークが整備されていなかった。2005年、世界銀行からの620万ドルの支援を受けて全てのソムで衛星通信による音声通話が可能となった。また90の基地局を設置されたり、152の衛星による公衆電話が導入された。さらに34のソムにブロードバンドのインターネットも導入された(※2)。また、世界銀行の支援でモンゴルの遊牧民10 万世帯に対して持ち運び可能なソーラー発電機も提供した。それによって遊牧民らは携帯電話の充電やテレビを見たりすることができるようになり入手できる情報量は格段に増加したり、夜遅くまで電気があるため活動ができるなど利便性が向上した(※3)。携帯電話にとって電気が重要であることは言うまでもない。

モンゴルでも他の諸外国と同様にスマートフォンを利用している人も多い。3Gの普及率は56万(普及率約20%)程度であるが、無料のWi-Fiスポットなども首都ウランバートルでは多数ある。モンゴルの平均年齢は26.6歳と非常に若いため新しいものの普及は速い。識字率もほぼ100%である。最近では首都ウランバートルで育った「草原を知らないモンゴル人」が増加しているという新たな問題も登場してきているようだが、ウランバートルでは諸外国と同じようにスマートフォンやインターネットが日常的に利用されている。

主要携帯電話会社は以下の4社である。人口が約280万の市場に4社あり、既に普及率が100%を超えており競争が非常に厳しい市場である。料金以外にもネットワークのカバレッジや端末、サービスの品揃えの競争が激しくなってきている。

  会社 市場シェア 概要
1 MobiCom

43.3%

日本の住友商事とKDDI、現地投資会社NewComが共同出資し1995年に設立したモンゴル初の携帯電話会社。1996年から事業を開始している(※4)。
2 SkyTel

21.1%

韓国SKテレコムが出資し1999年設立。
3 Unitel

19%

韓国Taihan Electric Wireが出資していたが、2010年9月にモンゴルMCSグループに売却。2006年からサービス提供。
4 G-Mobile

16.6%

モンゴル企業。2007年4月からサービス提供。

(公開情報より筆者作成)

(図1)G-Mobileでは自社ブランドのAndroidスマートフォンを販売している。
約15,000円とモンゴルでは決して安価ではない。

(図1)G-Mobileでは自社ブランドのAndroidスマートフォンを販売

(出典:G-Mobile)

以下に現地の携帯電話会社のテレビ広告などの動画を掲載する。モンゴルの状況が垣間見ることができる。

【参考動画】
MobiComのテレビCM

MobileComの15周年を記念して作成された会社紹介ビデオ

【参考動画】
SkyTelのテレビCM

【参考動画】
UnitelのテレビCM:ネットワーク・カバレッジの強さを訴求している。

【参考動画】
G-Mobileのテレビ広告

【参考動画】
モンゴルのICT発展に向けた取組を紹介するビデオ(2011年)

世界銀行の支援で遊牧民がソーラーパワーを導入した。携帯電話の充電も行っている。

日本は民主化後のモンゴルの最大の援助供与国であり、日本の大相撲で多くのモンゴル人力士が活躍していることからモンゴル人にとって日本は親近感がある国家である。このような親日国モンゴルとの関係を大切にしていきたい。

(参考) 首相官邸「モンゴル紙への安倍総理寄稿文」(平成25年3月29日)

*本情報は2013年3月31日時点のものである。

※1 外務省(平成17年8月)「モンゴルにおける対日世論調査(概要)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/mongolia/yoron05/

※2 World Bank(2011) Mar 31, 2011, “Mongolia: Information and Communications Infrastructure Development Project” http://www.worldbank.org/en/news/feature/2011/03/31/mongolia-information-and-communications-infrastructure-development-project

※3 World Bank(2012) Sep 20 \, 2012, “Solar Power Lights up Future for Mongolian Herders” http://www.worldbank.org/en/news/feature/2012/09/20/solar-power-lights-up-future-for-mongolian-herders

※4 MobiComの設立については住友商事のサイトにも詳細が出ているので参照頂きたい。
http://www.sumitomocorp.co.jp/special/person_18/
https://www.sumitomocorp.co.jp/society/doc/env2011j_08.pdf

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