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2013年4月12日掲載 |
2013年4月9日の日本経済新聞(7面)にて、最近の米中でのサイバー攻撃を『クール・ウォー(Cool War)』であると海外のメディアが称していることを紹介していた。米ソでの「Cold War(冷戦)」を意識して、米中でのサイバー攻撃を「Cool War」と米メディアでは呼んでいるとのことである。 「Cool War」とは何か?国内外のメディアはこのような「言葉作り」が得意だから読者を惹きつける新語を作っているのだろうが、冷戦のように全世界の体制や国民生活までを巻き込むまでに至っていないのか、現時点では欧米でも一般市民まではあまり浸透していない。「Cyber warfare(サイバー戦争)」の方がまだ一般的であろう。 『Foreign Policy』のような外交誌では、よく「Cool War」というタイトルのレポートを見かける。2012年6月にJohn Arquilla氏が「Cool War: Could the age of cyberwarfare lead us to a brighter future?」と題したレポートを発表した(※1)。 サイバー戦争は「Cool War」なのか?国家が関与している疑いのあるサイバー攻撃を「サイバー戦争」と称することがよくある。しかし、「サイバー戦争」という用語にも明確な定義はない。米中間でのサイバー攻撃が問題になっているが、お互いに自らが攻撃していることを公式に認めたことはない。国家がサイバー攻撃からの「防衛」については様々な対策が講じていることは報じられるが、「攻撃」について発表することはほぼ皆無である。イランの核施設を標的とした強力マルウェアStuxnetによるサイバー攻撃はアメリカとイスラエルが攻撃を仕掛けたと報じられているが、両国ともその攻撃について公式にコメントをしていない。 Cold War(冷戦)の延長としての「Cool War」サイバー攻撃は情報通信技術の脆弱性を突いて攻撃を仕掛けてくるものである。情報通信技術が発達し、国家は民間インフラから個人の生活までがサイバースペースに依拠するようになった。サイバースペースに依拠すればするほど、脆弱性も多くなるため、サイバー攻撃の脅威も増すようになった。サイバー攻撃は、このようにサイバースペースの登場とともに出てきた新たな攻撃手法である。しかし、実際に国家間でのサイバー攻撃(サイバー戦争)は、現実の国際関係を反映し、その延長線上に存在しているイシューだろう。 国家間のサイバー攻撃が問題になるのは、米中、朝鮮半島、中東諸国、印パといった現実の国際関係においても緊張関係にある国家間同士である。サイバー攻撃だけではなく、時にはリアルな軍事衝突の危険もある地域である。 結局のところ、サイバー攻撃が登場し「Cool War」という新たな概念が登場しているが、それは現在の米中を軸とした新たな冷戦「Cold War」構造の延長線上にあるのだろう。 【参考動画】 *本情報は2013年4月11日時点のものである。 ※1 JOHN ARQUILLA(2012) “Cool War: Could the age of cyberwarfare lead us to a brighter future?” (Foreign Policy 2012 June) ※2 DAVID ROTHKOPF(2013) “The Cool War” (Foreign Policy 2013 Feb) ※3 前掲。原文:The purpose of the Cold War was to gain an advantage come the next hot war or, possibly, to forestall it. The purpose of Cool War is to be able to strike out constantly without triggering hot war while also making hot wars less desirable (much as did nuclear technology during Cold War days) or even necessary. ※4 前掲。原文:It's a new game. Undoubtedly, it is one that will involve many twists and turns and may undercut some of the assumptions that have led Chinese and U.S. planners to think that playing at this new game is indeed safer than old approaches. |
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