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2013年5月11日掲載 |
西アフリカのコートジボワールでIBMと現地通信事業者Orangeらが携帯電話の利用状況に関する情報を収集、それらをビッグデータとして活用し、現地の公共バスのルート、時刻表の再編に役立てようという取組みが行われている。 コートジボワールでのIBMとOrangeの取組みIBMとOrangeらはコートジボワールの最大都市アビジャンでOrangeの携帯電話ユーザの利用動向情報を収集した。Orangeが現地で実施している「Data for Development」プロジェクトの一環で2011年12月から2012年4月までの情報を収集。コートジボワールの500万ユーザの25億の通話・通信記録から利用動向を収集した。個人情報や通話の内容などは特定されない仕組みになっている。 ユーザが携帯電話で電話(音声通話)、ショートメッセージ(SMS)を送信した際に、そのアクションが基地局に記録され、ユーザの位置情報などが収集され、行動がデータ解析され、公共バスの運行ルート再編、時刻表の組替えに反映させることを目指している。GPSなどの高度な機能が搭載されたスマートフォンを保有しているユーザの行動記録ではなく、ただの音声通話、ショートメッセージ(SMS)送受信の記録だけである。 Orangeが集積したそれらの情報をIBMのソフトウェアで解析した。IBMではアビジャンでのプロジェクトを「AllAboard」と呼んでおり、現在65か所の改善できる点があると想定しており、2つの路線を追加すること、既存の1本を延長することによって10%の通勤時間短縮が可能であると指摘している(※1)。ただし、現在はまだプロジェクトの初期段階であり、具体的な実用化(バスルート、時刻表の再編)の時期は見えていない。 ビッグデータ以前に取り組むべき課題コートジボワールの人口は約2,000万で、最大都市アビジャンの人口は約370万である。アビジャンには539台の大型バス、5,000台のミニバス、11,000台のシェアタクシーが運行している。これ以外にも一般人が運転している車やバンによる「非公式でアドホックなバス、タクシー」も多数ある。 平均年齢が20歳で、24歳以が人口の60%を占める若者が多い国である。農村部から出稼ぎや仕事を求めてやって来る若者が多い。2013年は復興需要などが見込まれて経済成長も期待されているが、主要産業はカカオや原油・石油製品などである。若者が都市部に出てきてもすぐに仕事が就けるとは限らない。まだ全員が自家用車を保有しているわけではないので、公共バスは重要な市民の足になっている。 コートジボワールでは公共バスの屋根に飛び乗って悪ふざけをする男性の若者が多く、社会問題にもなっている。無銭乗車をするのが目的ではなく、純粋にバスの屋根に乗って騒ぎたいだけのようだ。一人だけでなく、何人もがバスに飛び乗り、バスの上で燥いでる。このような若者の行為が渋滞や事故の原因にもつながっている。道路は年々舗装されてきているが、渋滞や公共バスの遅延は解消されていない。 今後コートジボワールだけでなくアフリカを始めとする新興国でも、ビッグデータ活用による公共交通機関のルートや時刻表の改善が期待される。一方でこのような若者の行動もビッグデータとして集積、解析時の変数になっているのだろうか。ビッグデータ活用によるバスのルート、時刻表再編の前にまだ解決しなくてはならないことも残存している。 (図1)コートジボワールのバス停とバス ![]() ![]() ![]() ![]() (出典:Radiodiffusion Télévision Ivoirienne) 【参考動画】
アビジャンの公共バスの様子 若者らがバスの屋根に上っている様子がうかがえる。 *本情報は2013年5月5日時点のものである。 (参考) ※1 MIT Technology Review(2013) Apr 30, 2013, “African Bus Routes Redrawn Using Cell-Phone Data” |
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