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2013年5月11日掲載 |
アメリカ国防総省は2013年5月、同国議会に提出した「中国の軍事力に関する年次報告書 2013」(“ANNUAL REPORT TO CONGRESS Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2013”)が今年も公開された。 今年の報告書でも米中のサイバーセキュリティが重要な議論の1つになっている。報告書の中で、サイバースペースへの侵入には「中国政府と軍が直接関与したと思われる」と指摘した。本稿では2011年から2013年までの3年分のアメリカの「中国の軍事力に関する年次報告書」の中でのサイバーセキュリティ分野におけるアメリカの中国に対する姿勢と日本の動向を見ていきたい。 「中国の軍事力に関する年次報告書」に見るアメリカへのサイバー攻撃(1)2011年の年次報告書2011年に提出された「中国の軍事力に関する年次報告書 2011」では、アメリカへのサイバー攻撃は「いくつかの攻撃は中国が発信源だったとみられる」と記していた。アメリカへのサイバー攻撃は中国からだと思われる、という「推定」を前提にした書き方である。 (原文:下線筆者) (2)2012年の年次報告書 (原文:下線筆者) (3)2013年の年次報告書 (原文:下線筆者) 2011年、2012年の年次報告書では、「中国」と称している。つまり政府や軍の関与かもしれないし、民間かもしれないし、個人かもしれない。攻撃元の具体的な組織の特定まではしていない。 サイバー攻撃への関与を否定する中国中国とアメリカはサイバーセキュリティをめぐって、あらゆるレベルで協議しているが、両国ともに自国自身のサイバー攻撃への関与は認めていない。両国ともに、自国がそれぞれの国からサイバー攻撃の被害を受けていることを主張している。 今回、アメリカが発行した年次報告書において、アメリカへのサイバー攻撃元として名指しされている中国は、いつも通りその関与を否定している。中国外務省の華春瑩(Hua Chunying, spokeswoman)は「中国は、いつも述べているように、あらゆるサイバー攻撃に断固反対する」と述べ、「アメリカとは今後もサイバーセキュリティについて、建設的な対話を続けていく予定である。しかし根拠のない非難や憶測は米中二国間の関係を悪化させかねない」と指摘し、冷静な協力関係をアメリカに呼びかけた(※1)。 まだ続くだろう米中のサイバーセキュリティをめぐる攻防サイバーセキュリティは核兵器開発や環境問題など他のイシューと異なり、可視化することが難しい。一方で、国家を形成する社会基盤のあらゆるインフラが情報通信技術で構成されるサイバースペースに米中のみならず世界のあらゆる国家が依拠するようになり、そこの脆弱性を突いて攻撃をしかけてくるサイバー攻撃が国家間の重要なイシューとなった。米中間をめぐるサイバーセキュリティをめぐる攻防はまだまだ続くであろう。 来年(2014年)もアメリカでは「中国の軍事力に関する年次報告書」が発行されると考えられる。その時、報告書においてアメリカはどのようサイバー攻撃について表記するのであろうか。 日本にとっても重要な米中のサイバーセキュリティと日米サイバー対話2013年5月9日から10日まで、日米両政府がサイバー攻撃への対策を話し合う初めての対話(第1回日米サイバー対話)が外務省で行われ、10日には日米両国で「日米サイバー対話 共同声明」が発表された(※2)。この会議は2013年4月に岸田外相とケリー国務長官との首脳会談で、サイバー分野で政府間の連携を深めることで一致していた(※3)。 今後日本にとっても米中両国のサイバーセキュリティに関する動向は非常に重要な問題となってくる。 【参考動画】(参考) *本情報は2013年5月10日時点のものである。 ※1 (原文:下線筆者) ‘‘China has repeatedly said that we resolutely oppose all forms of hacker attacks,’’ she said. ※2 外務省(2013)平成25年5月10日『日米サイバー対話 共同声明』 ※3 外務省(2013) 平成25年4月15日『日米外相会談(概要)』http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/page4_000042.html |
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