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Global Perspective 2013
2013年6月13日掲載

ブラジル:NFCを活用したモバイルペイメントへの取組み

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2013年6月3日、ブラジルの通信事業者でテレコムイタリアの子会社TIM Brasilとブラジル最大級の銀行Banco BradescoがNFCを活用したモバイルペイメントのトライアルを開始することが報じられた。

TIM BrasilとBanco BradescoがNFCを活用したモバイルペイメント

ブラジルの通信事業者でテレコムイタリアの子会社TIM Brasilとブラジル最大級の銀行Banco BradescoはリオデジャネイロとサンパウロでNFCを活用したモバイルペイメントのトライアルを実施する。商用開始は2013年末を目指している。トライアルを実施する具体的な店舗名、期間、人数は明らかにされていない。LG Optimus G、Motorola Razr HDなど3台の端末を利用し、Banco Bradescoが発行する「payWave」デビットのアプリケーションで支払いを行う。

TIM Brasilは2013年になってから2回目のNFCを活用したモバイルペイメントのトライアルである。前回は2013年2月に同国の銀行Banco Itaú、マスターカードと提携して「MasterCard PayPass」を利用してサンパウロ、リオデジャネイロの100の店舗で50人の参加者でトライアルを行った。GemaltoがUpTeq NFC SIMカードやTSM(Trusted Services Management)を提供していた。当初2013年第2四半期にリリースすると予定されていたが、商用化が開始されたとは2013年5月末時点では報じられていない。

ブラジル携帯電話市場の特徴

ブラジルの携帯電話加入者は約2億6,800万で普及率は約137%と飽和市場である。ブラジル市場では徐々にプリペイドの比率が減少しているが、それでもまだ約80%がプリペイドという市場である。そのため1人で複数のプリペイドSIMを保有することも日常的であるため、普及率も100%を超過している。主要大手通信事業者が4社あり、シェアは僅差で、常に価格競争やキャンペーンを行っており、チャーンは約3〜4%である。3Gの加入者は約7,100万で普及率約26%であるため、多くがGSM(2G)での利用である。

(表1)ブラジルの通信事業者とシェア

  通信事業者 シェア
1 Vivo 約28.4%
2 TIM Brasil 約26.6%
3 Claro 約24.8%
4 Oi SA 約18.5%

(公開情報を元に筆者作成)

(表2)ブラジルでのプリペイド比率の遷移

(表2)ブラジルでのプリペイド比率の遷移

(出典:Teleco)

(表3)ブラジル通信事業者のチャーン遷移

(表3)ブラジル通信事業者のチャーン遷移

(出典:Teleco)

大きなイベントを控えて成長著しいブラジル市場

2013年6月4日に日本はオーストラリア戦で2014年ワールドカップブラジル大会行きを決めて日本中が盛り上がったように2014年にはブラジルではワールドカップが開催される。また2016年8月にはリオデジャネイロでオリンピックが開催される予定である。

HSBCによるとブラジルスポーツ省ではワールドカップとオリンピックの経済効果は、2010年から2019年の期間で総額1,832億レアル(約7.1兆円)と試算している(※1)。ブラジルでのインフラ投資は進展しており、日本からも日立製作所が研究開発拠点を開設したほか、東芝は電力用変圧器の新工場の稼働を開始、三菱重工業は自動車の変速機などに使われる歯車を加工する工作機械の販売を強化、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)3」の現地での生産に乗り出している。

 かつて「BRICs」というワードが流行したことがあった。これは経済成長が著しい新興国の代表としてブラジル・ロシア・インド・中国の頭文字を合わせた4カ国の総称である。ブラジルが2014年にワールドカップ、2016年にオリンピックという大きなイベントを2つ控えて現在再び注目を集めている。多大なインフラ投資に伴い、経済が活性化する。金だけでなく物、人、情報もそれに伴って大きく動くのがグローバル化された経済の特徴である。

今回TIM Brasilが計画しているNFCを活用したモバイルペイメントはブラジルでのTIM Brasilユーザが対象のようだ。これから大きなイベントを控えて世界中からブラジルに投資が集まり、多くの人がブラジルを訪問するのだから、世界中のユーザが利用できる仕組みを構築することに期待したい。その方が遥かに利便性も高く、多くの店舗が利用に向けてシステムを導入するようになればモバイルペイメントのエコシステムも循環するようになるはずだ。引き続きブラジル市場には注目していきたい。

【参考動画】
ブラジル、ロシア、インドでのICT関連の指標を紹介した動画(2012年)

*本情報は2013年6月12日時点のものである。

※1 HSBC(2012年9月)
http://www.assetmanagement.hsbc.com/jp/attachments/201210brazil.pdf

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