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Global Perspective 2013
2013年6月28日掲載

インド:「airtel Free Zone」と携帯電話によるインターネットアクセス

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2013年6月26日、インドの通信事業者AirtelがGoogleと提携してインターネットアクセスサービス「Free Zone」の提供を開始した。

「airtel Free Zone」

インド最大の通信事業者AirtelとGoogleが提供する「Free Zone」は、インターネットに接続できる携帯電話端末から、Google検索、Gmail、Google+に無料で利用できるサービスである。但し、Google検索結果から先へのリンク、Gmailで添付を開封する時にはデータ通信費用が発生する。すでにフィリピンや南アフリカで提供しているサービスである(参考レポート)。Airtelでは、主にフィーチャーフォンをプリペイドで利用している顧客を対象にしている。

現在、インドの携帯電話加入者数は約8億6,700万(普及率72%)である。Airtelのシェアは約22%で約1億9,000万である。但しこの数字はSIMカードの販売された枚数であるため、1人が複数枚のSIMカードを保有していることが多いことから実際の数字よりも大きい。Airtelは今回の「Free Zone」をインドにいる2億人以上の人が利用してくれることを期待している(※1)。

インドでは通信事業者が多く乱立して競争が激しいため、プリペイドSIMカードの販売競争が続いていることから、通信事業者としても差別化を図り、さらにデータ通信費用増によってARPUの向上を目指すことによって収益化していくことが重要である。Airtelとしても「Free Zone」をトリガーとして、そこから先のデータ通信ARPU増を狙いたい。

(図1)airtel Free Zone

(図1)airtel Free Zone

(出典:Airtel)

まだまだ開拓の余地があるインドでのインターネット接続

インドの人口は12億人以上で中国に次いで世界2位である。インドのIAMAI (Internet and Mobile Association of India )が2013年1月に発表した調査によると、インドでの携帯電話からのインターネットにアクセスしているユーザは約8,700万である(※2)。2015年までにはインドでの携帯電話からのインターネットアクセスは約1億6,500万になると予測している。インドの携帯電話加入者数が8億6,700万であるから、携帯電話でインターネットにアクセスしているのは10%程度である。

また携帯電話以外のインターネットアクセスの状況を見てみると、インドの当局TRAI(Telecom Regulatory Authority of India)が発表しているインドでの携帯電話以外のインターネットアクセスは2012年12月末で2,533万である。これは主にPCからのアクセスであるが、いまでも4割程度の1,035万はナローバンド(256kbps以下)でのアクセスである。伸び率も携帯電話と比すると高くない。すなわち、インドでは携帯電話の方がPCでの接続よりも遥かに成長しており、これからも高い成長が期待されている。

(表1)インドでのインターネットアクセス数の推移(携帯電話以外)

(出典:TRAI)

成長著しいインドのスマートフォン市場

人口が12億人以上いるインドにおいて、携帯電話とPCを含めてインターネットにアクセスしているのは1億強であることから、これからも大きな成長の余地が残っている。さらに携帯電話の普及のスピードは著しい。その中でも驚異的な勢いで伸びているのがスマートフォンである。

アメリカの調査会社Stragegy Analyticsが発表した2013年第1四半期のインドのスマートフォン利用者数が日本を上回り、中国、アメリカに続く世界第3位になったことを明らかにした(※3)。同期の世界全体でのスマートフォンは年間39%の成長を記録しているが、インドの成長率は約4倍の163%で、中国(86%増)、アメリカ(19%増)、日本(24%増)の成長率よりも上回っている。インドではMicromaxなどのインドの地場メーカーも育ってきており、ブランド力も確立していることから、スマートフォン成長の勢いは今後も続くであろう。一方でインドでもスマートフォンを購入できるのはまだ一部の富裕層、中間層である。彼らにはAirtelが提供する「Free Zone」のようなサービスは不要であろう。

今後は「Free Zone」をフィーチャーフォンで利用していたユーザらがどのタイミングでスマートフォンに移行し、「Free Zone」を卒業していくのか注視していきたい。

(参考)

【参考動画】

*本情報は2013年6月27日時点のものである。

※1 N Rajaram, AirteのChief Marketing Officer
“As the country’s leading telecom services provider, we at Airtel are constantly looking for new ways of exciting more and more of our 200 million plus customers in India about the data experience. In this market, where feature phones predominate, our association with Google to bring Free Zone to India will encourage millions of users to discover the power of mobile Internet for the very first time and leverage the amazing world of information search, email and social collaboration - at no incremental cost”

※2 The Hindu(2013) Jan 2, 2013 “Internet mobile users set to double to 165 m by 2015”
http://www.thehindu.com/sci-tech/technology/internet/internet-mobile-users-set-to-double-to-165-m-by-2015/article4265560.ece

※3 TechCrunch(2013) Jun 26, 2013 “India Passes Japan To Become Third Largest Global Smartphone Market, After China & U.S.”
http://techcrunch.com/2013/06/26/india-third-in-smartphone-world/

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