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Global Perspective 2013
2013年7月19日掲載

群雄割拠のメッセンジャーアプリ市場を制するのは

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2013年7月8日、アメリカの調査会社Infoneticがメッセンジャーアプリの動向予測に関する調査結果を発表した(※1)。スマートフォンが登場するまではPCを中心に利用され、「VoIP」と呼ばれていた。

2013年に10億、2017年に20億突破と予測されるメッセンジャー

日本でメッセンジャーアプリと言えば「LINE」が代表的である。世界では「WhatsApp」の人気が高い。調査会社Infoneticによると、2012年に全世界でそれらの利用者数は前年比550%増の6億4,000万だったが、2013年には10億に達するだろう、という予測を出している。さらに2017年には20億を突破すると予測されている。

これらにはVoIP(Voice over Internet Protocol)と呼ばれるマイクロソフトが提供している「Skype」なども含まれており、約40%が「Skype」とのことである。「WhatsApp」は2013年6月に月間アクティブユーザーで2億5,000万人を突破したと報じられた。「Viber」は2013年5月に世界で2億ユーザを突破した。「LINE」は2013年5月に1億5,000万を突破した。たしかにこれらの数字を合計すると2013年中に10億を突破するだろう。ここでのユーザというのは、各社によって定義が異なるため、ダウンロード数であることもある。すなわちアプリによっては同じ人が何回もダウンロードしてカウントされていることもあるので留意は必要である。

VoIPと呼ばれていた時代

かつて「Skype」が登場した頃、「VoIP(Voice over Internet Protocol)」と呼ばれていた。スマートフォンが登場して「Skype」がアプリを提供した時には「mVoIP(モバイル向けVoiP)」と呼ばれていた。今回のInfoneticsの調査でも「mVoIP」の代表として「Skype」が出てきている。

「Skype」が登場した時は、PC同士での利用が主流だった。PCに「Skype」のソフトをインストールしてPC画面の前で話しをしていた。今でももちろんある。その後、世界中でスマートフォンが急速に普及したことによって、「WhatsApp」や「LINE」に代表される多くのメッセンジャーアプリが登場してきた。それらの多くはスマートフォン(モバイル)で利用することが前提とされたアプリであり、PCがなくとも利用できるのが特徴である。最近では「Skype」のようなかつて「VoIP」と呼ばれていたアプリも、スマートフォン以降に登場したアプリと同様にメッセンジャーアプリとして扱われている。

「Skype」のようにPCで利用できるアプリの多くは先進国を中心に存在していた。市場での競争が激しくカナダの「Link2VoIP」のようにサービス提供を中止したアプリもある。「Skype」のようなVoIPは固定電話にも通話ができることを売りにしている。つまり、「Skype」同士では無料だが、固定電話とも通話ができ、それは通信費(接続料)が発生するため、そこでビジネスを行っていたプロバイダーが多い。しかし、「VoIP」プロバイダーの儲けは非常に少ない。2012年に年間1人あたりの平均利用料金は7.13ドル(約700円)である(※2)。1年間で700円、1か月にすると60円弱しか利用されていない。彼らは固定電話にも電話がかけられるということから法人市場にも進出している。法人市場ではある程度の通話料収入があるはずだ。つまり多くの一般消費者はVoIPで接続料が必要な固定電話への通話はほとんど行っていないのだろう。このような状況では設備を維持する方が費用がかかってしまい、「Link2VoIP」のように事業から撤退せざるを得ないプロバイダーが登場するのも仕方がない。

メッセンジャーアプリ市場を制するのはどこだろうか

「VoIP」と呼ばれていた時代からサービスを提供していたプロバイダーは現在、スマートフォン向けにメッセンジャーアプリを提供しているが、スマートフォン以降に登場したアプリほど勢いは感じない。そして現在でも多くのメッセンジャーアプリが無料通話を提供している。新興国でも中古端末も含めてスマートフォンが普及しており、世界中でスマートフォンが携帯端末の中心となり、メッセンジャーアプリをインストールして利用するようになると、固定電話または携帯電話の番号に電話をすることによる接続料のビジネスモデルは先細りしていくだろう。スマートフォン以降に登場したメッセンジャーアプリは接続料での収益モデルを検討しているところはほとんどない。広告収入や、付随したゲーム、スタンプ販売などプロバイダーに応じてビジネスを展開している。

ユーザ側からは様々な選択肢があるので、自分や友人らが使っている利便性の高いアプリを選べる。しかしビジネスモデルを構築し安定した収入がないプロバイダーはこれから淘汰されていくだろう。

メッセンジャーアプリは2013年に10億、2017年に20億にまで利用者が増加すると予測されており、これからも成長が期待されている。一方で多数のプレーヤーが参入しており競争が非常に激しいメッセンジャーアプリ市場を制するのはどこのプロバイダーになるのだろうか、今後も注目していきたい。

(表1)VoIP時代からある主要なメッセンジャーアプリ

主要アプリ 設立(提供開始) 利用者数
Skype 2003年設立。
2011年からマイクロソフト傘下。
約4億
Nimbuzz 2008年設立。
2013年5月にはパキスタンの通信事業者Mobilinkと提携(※3)
約1億
(2014年までに4億目標)
fring NA NA
Rebtel 2006年設立。 約1,700万
(2012年)

(出典:公開情報を元に作成)

(表2)スマートフォン以降に登場した主要なメッセンジャーアプリ

主要アプリ 設立(提供開始) 利用者数
WhatsApp 2009年設立 約2億
1日に100億通のメッセージが送受信される(2012年8月)
Kakao 2010年3月サービス提供開始 約1億
Viber 2010年10月サービス提供開始 約2億
WeChat 2011年1月サービス提供開始 約3億
LINE 2011年6月サービス提供開始 約1億5,000万
Freephoo 2011年11月サービス提供開始 NA
maaii 2012年1月サービス提供開始 NA
LINE2 2012年2月サービス提供開始 NA
Vonage Mobile 2012年2月サービス提供開始 NA
Cubie 2012年3月サービス提供開始 NA
Tango NA 約1億
GO SMS Pro NA 約5,000万
Plingm NA NA

(出典:公開情報を元に作成)

*本情報は2013年7月16日時点のものである。

※1 Infonetics(2013), Jul 8,2013, “Infonetics Research raises VoLTE forecast; Over-the-top mobile VoIP subscribers nearing 1 billion mark”
http://www.infonetics.com/pr/2013/Mobile-VoIP-Services-and-Subscribers-Market-Highlights.asp

※2 "But the fact remains that most OTT mVoIP providers are making very little money per user. In 2012, the average revenue per user was a meager US$7.13 annually.
http://www.convergedigest.com/2013/07/infonetics-raises-volte-forecast.html

※3 Mobilink(2013)May 2,2013,” Nimbuzz And Mobilink Partner To Launch A New Communications Solution In Pakistan”
http://www.mobilinkgsm.com/media-center/nimbuzz-and-mobilink-partner-to-launch-a-new-communications-solution-in-pakistan/

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