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Global Perspective 2013
2013年8月5日掲載

Googleが米国スターバックスでAT&Tに代わって無料高速Wi-Fi提供

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

アメリカのGoogleとスターバックスは2013 年7月31日、Googleがスターバックスのアメリカ国内の全店舗で無料のWi-Fi(公衆無線LAN)サービスを提供すると発表した(※1)。今回のスターバックスへのWi-Fi提供はGoogleが行なっているインターネットアクセスをより安価で、より高速で、より広く利用できるようにするための投資の一環である。

AT&Tよりも10倍の速度でWi-Fiを提供

Googleは2013年8月から18カ月(1年半)かけて、アメリカ全土にあるスターバックス7000店以上の全ての店舗で提供しているWi-FiサービスをGoogleが提供しているものに切り替える。アメリカのスターバックスの店舗では2008年からAT&TがWi-Fiを無料で提供している。

GoogleのサービスはAT&Tのサービスの10倍以上のスピードになる予定。Googleは通信会社Level3 Communicationsと提携してWi-Fiを提供する。またGoogleの高速ブロードバンドサービス「Google Fiber」を提供している地域(例えばカンザス州カンザスシティなど)の店舗では、従来のAT&Tのものより100倍高速なWi-Fiを提供する予定。

スターバックスとGoogleの提携条件についての詳細は明らかにされていないが、スターバックスのデジタル部門の責任者Adam Brotman氏は「両社で次世代『スターバックス・デジタル・ネットワーク』を共同開発していく」と語っている(※2)。

スターバックスの店内写真

コーヒーショップでのWi-Fiは無料が基本。次の差別化は高速化

Googleは今回のスターバックスのように無料でWi-Fiを提供している場所は、ハリケーンでインターネットにアクセスできなくなったり、家でインターネットがない人が勉強するにはとても重要なコミュニティになるだろう、と述べている。アメリカではスマートフォンが普及し、さらにLTEが導入された以降はだいぶモバイルでのネットワークが改善された。それでも日本のようにあらゆるところで3GなりLTEのネットワークが整備されていて快適にインターネットにアクセスできるわけではない。アメリカでは車で通勤、通学することが多いから電車の車内や駅でネットワーク接続が悪いのかもしれない。その代わり、学校やスターバックスのようなコーヒーチェーン、ファーストフードではWi-Fiを無料または安価で提供しており、快適にアクセスできることから多くの人がそこに集ってラップトップやスマートフォン、タブレットを用いてインターネットにアクセスしている。

スターバックスのような店舗側もユーザーに店に来てもらってWi-Fiにアクセスするついでにコーヒーやらケーキ、バナナを買ってくれれば、それで良い。ユーザーは無料でWi-Fiにアクセスするために、こういうコーヒーショップやファーストフードに行くようになる。Wi-Fiが利用できないと競合店にユーザーをとられてしまう。どこででも無料で提供していると、今度はWi-Fiを提供する店側も速度で差別化をして競合店と勝負する必要が出てくる。今回Googleが提供するWi-FiはAT&Tの10倍(場所によっては100倍)とのことである。メールやらWebを調べる程度であればそれほどの速度は必要ないかもしれないが、動画を閲覧するといった場合は高速の方が快適であろう。そして一度、高速通信に慣れてしまったユーザーは、遅い速度にストレスを感じてしまう。

アメリカではコーヒーショップやファーストフードにおいて無料でWi-Fiが提供されている。そこに多くの人が集ってインターネットにアクセスしている。無料であることは当然になってきており、高速でのインターネットアクセスが次の差別化要因になってきているのだろう。

LTEのデータ量制限が日本での無料Wi-Fi普及のカギか?

日本ではコーヒーショップやファーストフードに行かなくとも、どこでも快適な高速通信を享受することができるから、このような店舗が「無料の高速Wi-Fi」で客引きをすることは少ないかもしれない。しかしLTEを利用していると定額料金で利用できるデータ量に制限があり、例えばNTTドコモのLTEでは7Gまでは定額料金で利用できるが、それを超えると料金がかかる料金プランがある(※3)。LTEを利用してテザリングや動画閲覧を行っているとあっという間に7Gを超越することがある。そのようなユーザーにとって無料で高速Wi-Fiを提供してくれるスポットは重要である。

これからは日本でもどこかスポットに行って、そこで無料で高速Wi-Fiにアクセスする、というスタイルが普及するかもしれない。かつてスマートフォンが普及し始めた頃、Wi-Fiはモバイルネットワークのオフロードとして利用されていたが、これからはデータ量を超えた時の超過料金対策として活用されるのではないだろうか。

【参考動画】

*本情報は2013年8月2日時点のものである。

※1 Google(2013) Jul 31, 2013, “Starbucks’ WiFi goes Google”
http://googleblog.blogspot.ca/2013/07/starbucks-wifi-goes-google.html

※2 Wall Street Journal(2013)Jul 31, 2013, “Google to Provide Free Wi-Fi at Starbucks”
http://blogs.wsj.com/digits/2013/07/31/google-to-provide-free-wi-fi-at-starbucks-stores/

※3 NTTドコモ「Xi パケ・ホーダイフラット」
定額料5,985円で7Gまで利用可能で、利用のデータ量が7GBを超えた場合、当月末まで通信速度が送受信時最大128kbpsになる。別途申込むと、7GB超過後2GBごとに2,625円で通常速度で利用できる。
http://www.nttdocomo.co.jp/charge/packet/xi_pake_hodai_f/

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