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2013年8月14日掲載 |
ケニアでのモバイル送金利用者数が2,300万を超えたと2013年8月1日にGSMAが発表した(※1)。ケニアの成人の74%にあたる数字である。多くの新興国で銀行口座を持たなくとも送金が可能なモバイル送金は社会生活のインフラとなっているが、ケニアでここまで浸透したその背景を探ってみたい。 ケニアの成人の7割以上が利用するモバイル送金ケニアの人口は約4,000万人である。そしてその半分(約42.5%)を14歳以下が占めている。ケニアには55歳以上は全体の10%にも満たない約269万人である。 同郷、同部族を大切にするケニアの風習がケニアでモバイル送金を根付かせるケニアのようなアフリカやアジア、中南米の新興国では銀行口座を持たなくとも携帯電話番号宛に送金を行うモバイル送金サービスが多くの国で導入されている。ケニアの「M-Pesa」と仕組みはほぼ同じである。店舗やキオスクに行き、送信先の携帯電話番号宛に送金するお金を預ける。受金者はその旨のメッセージを受け取り、近くの店舗やキオスクに行ってお金を受け取る、というシンプルな仕組みは新興国においてお金の流れの重要なインフラになっている。 ではケニアは他の国よりもどうしてここまでモバイル送金が市民の生活に根付いているのだろうか。それはケニアの風習にあるのではないだろうか。ケニアのようなアフリカ諸国では郷土意識が強く、同じ土地出身や同じ部族の人同士が助け合って生きている。特にケニアではその意識が強いのだろう。同郷の人を大切にすることから、地方の人が都会に出ていくと同じ地方から先に都会に出ている人のところに泊めてもらったり、就職の世話をしてもらったりすることがある。都会に出てお金をある程度稼いで成功している人は自分の家族、親戚だけでなく同郷の人も助けるという習慣がある。都会に出て収入を得たにも関わらず、家族や故郷の人を助けないのは「冷たい人」と思われてしまい、故郷に残っている家族も故郷で肩身の狭い思いをすることになりかねない。ケニアでも地方は「村社会」だから、そのようなところで肩身の狭い思いをするのは辛いことである。 同じ土地出身や同じ部族出身者を助ける「パトロン」のような風習の最たるものは、ケニアの大統領が自分の出身部族に対する優遇政策にも現れている。ケニアの初代大統領ジョモ・ケニヤッタは自らの出身部族であるキクユ人の優遇政策を行い、後にケニアでの民族対立の発端になったことは有名である。2代目大統領ダニエル・アラップ・モイは少数民族カレンジン族出身で、当然自民族を優遇し、初代大統領ケニヤッタが優遇していたキクユ人を冷遇した。3代目大統領ムワイ・キバキはキクユ人で、キクユ人優遇政策で国民から反発を買った。ケニアではこのように大統領の出身民族の優遇政策は繰り返されている。大統領や大臣らの出身地域に道路や橋、学校などが建設されるからわかりやすい。 閑話休題。このように自分の故郷やその村の人々、同じ部族を大切にするというケニアの人々の習慣が、ケニアでモバイル送金が生活のインフラとして根付いて、他の新興国よりも発展している要因としてあげられると考えられる。地方(故郷)から都会や海外に出稼ぎに出て、お金を稼いだら地方(故郷)の家族や親戚、同郷の部族らに送金をする、その手段としてモバイル送金を活用するというのが日常生活に浸透しているのではないだろうか。 【参考動画】 *本情報は2013年8月13日時点のものである。 ※1 GSMA(2013) Aug 1,2013 “MMU releases infographic on the Kenyan experience with mobile money” |
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