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2014年1月27日掲載 |
フランスの国防大臣ジャン・イヴ・ル・ドリアン氏(Jean-Yves Le Drian)が2014年1月21日に、サイバー戦争を戦略的に最優先の課題(strategic priority)としてサイバーセキュリティ防衛対策プランに15億ユーロ(約20億ドル)を投資すると報じられた(※1)。サイバーセキュリティ対策の予算は今後5年にわたってフランスの軍事費の中に盛り込まれていく予定である。 フランスでは2013年にはフランス国防省を標的とした目立ったサイバー攻撃が780件あった。2011年には195件であったことから4倍にも増加したとドリアン国防大臣は述べている。そしてサイバー攻撃によって政府のサーバーが麻痺させられ、指揮系統が破壊されるリスクが増大していることを懸念している。海外やアクティビストからの巧妙なサイバー攻撃を受けており、それらは明らかにネットワークに侵入し、フランス軍のオペレーションに影響を与えかねないことについても危惧している。 フランス国防省ではサイバー攻撃からの防衛対策としては幅広く検討しており、EU諸国とのプラットフォームや専門家の知識、スキルの共有による連携のほか、フランス自身でのITやプログラミングの専門家の育成を図っていく。そしてフランス軍でのサイバー部隊を現在の約2倍の450人まで増やす予定である。 サイバー予算は軍事費全体の3.4%程度だが重要なサイバー攻撃対策今回フランス軍はサイバー攻撃対策費用として15億ユーロ(約20億ドル)の投資を発表した。ストックホルム国際平和研究所が発表した2012年の世界の軍事費で、フランスは世界6位の589億ドルである(※2) 。すなわち、サイバー攻撃対策に投資する費用は軍事費全体の中の3.4%程度と決して大きくはない。サイバー攻撃対策費用のほとんどが人件費である。あとはサーバー、ルーター、ソフトウェアなどの購入費用である。これらはミサイルや戦闘機の購入やメンテナンスにかかる費用と比較すると非常に安価である。 とはいえ、フランスは核兵器保有国である。現在フランスの核兵器保有量は、約350個程度でアメリカ、ロシアに次いで世界3位である。核兵器保有国にとってはサイバー攻撃によって核施設への侵入やシステムの停止、破壊といった、かつてイランの核施設を標的としたStuxnetのようなサイバー攻撃を仕掛けられる危険性を考慮しなくてはならない。そのためサイバー攻撃対策は国家の安全保障にとって重要な課題である。軍事費全体の中でサイバー攻撃対策に占める割合が3.4%程度とはいえ、それらを決して疎かにすることは許されないことなのだ。サイバースペースの保全は国家の安全保障に関わる重要な課題であり、これはフランスだけの問題ではない。 (表1)世界の軍事費2012年(ストックホルム国際平和研究所) ![]() (出典:ストックホルム国際平和研究所発表資料を元に作成) 【参考動画】 *本情報は2013年1月23日時点のものである。 ※1 Defensenews(2014) Jan 21, 2014, “France Military To Up Defenses Against Cyberwar” ※2 ストックホルム国際平和研究所(2013年4月) |
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