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2014年1月28日掲載 |
インド政府はサイバーセキュリティ専門家50万人を養成するために今後5年間で50億ルピーを投資することが2014年1月25日に報じられた(※1)。資金は政府だけでなく産業界からも支出される予定である。 50万人のサイバーセキュリティ専門家の養成さすがに人口12億以上をかかえるインドである。50万人ものサイバーセキュリティの専門家でインドのサイバースペースの防衛を行う計画だ。50万人というと東京都杉並区とほぼ同じ規模である。ちなみにNTTグループの連結子会社827社の従業員数でも約22万であるから、今回インドで養成されるサイバーセキュリティ専門家の半分にも満たない(※2)。 CERT-IndiaのGulshan Rai 氏(director general)によると、サイバーセキュリティ分野は能力のある人が非常に少ないとのことである。大学院生でエンジニアリングを専攻している学生でもセキュリティコードに関するテストで合格するのは21%程度で、79%が不合格である。ITに強いインドの学生ですらほとんどが不合格だそうだ。 デリーにあるIIIT-D(Indraprastha Institute of Information Technology, Delhi)では産学共同でサイバーセキュリティの研究、教育を進めており、現在170 人の大学院生、121人のポストグラデュエート(post graduate)、20人の博士がサイバーセキュリティの研究を行っており、今後も人員の更なる拡大を予定している。 現代社会ではあらゆる日常生活の活動がサイバースペースに依拠しており、サイバーセキュリティは今までにないほど複雑になってきている。特にインドはITが発展し、あらゆる日常生活の多くがサイバースペースに依拠している。またあらゆる近代兵器がプログラミングで運用されていることからサイバー攻撃によるシステムの麻痺や破壊は、国家の安全保障上、大きな問題になりかねないことから、サイバーセキュリティの専門家の重要性が増してきている。そのためにも人材育成とその確保はインドだけでなく全世界で喫緊の課題である。 インド政府のネット監視計画「Netra」一方で、インドでは2014年1月に、インド政府が開発を進めてきた「Netra」というインターネット上の監視システムが近日中に運用開始される予定であると報じられ(※3)。TwitterやFacebook、ブログといった個人の発した情報の他にもSkypeやGoogle Talkなどでの会話の全てを監視し、情報収集を行いインドの治安、情報当局が共有できるようにすることを目的としている。 インターネット監視システム「Netra」は、インド防衛省の管轄下にある防衛研究開発機構(Defense Research and Development Organisation、DRDO)、人工知能・ロボット研究所(Centre for Artificial Intelligence and Robotics、CAIR)によって開発された。首相府や内務省、C-DoTやCERT-Inなども開発メンバーとして参加していた。 インドではサイバーセキュリティの専門家50万人を50億ルピーも投資して今後5年間で養成しようとしている。彼らはサイバースペース保全のためにサイバー攻撃からの防衛対策だけではなく、「Netra」のような市民のインターネット監視システムの開発や運用、監視に携わる人も多くいるのだろう。 アメリカでも米国家安全保障局(NSA)による市民の監視が問題になっている。インドにおいても同様に市民のインターネット監視は批判が出てくることが想定される。インド政府はサイバースペースの保全による国家の安全保障、治安維持と市民監視に対する市民への対応をうまくバランスを取ることができるかのだろうか。そして50億ルピーかけて養成される50万人のサイバーセキュリティ専門家は具体的にどのような業務に携わるのかにも注視していきたい。 *本情報は2014年1月28日時点のものである。 ※1 Times of India(2014), “Govt, industry to spend about Rs 500 cr on cyber training” ※2 NTT(持ち株)より。数値は2013年3月末時点のもの。 ※3 Times of India(2014), Jan 6, 2014, “Govt to launch internet spy system 'Netra' soon” |
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