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Global Perspective 2014
2014年2月18日掲載

イスラエル、イラン:サイバースペースをめぐる攻防

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
副主任研究員 佐藤 仁

2014年1月31日にイスラエル参謀本部諜報局のAviv Kochavi氏が「サイバースペースは従来の武器以上に戦争において重要なものになり、サイバー技術は戦争に革命を起こす」と指摘し、サイバー技術の重要性と脅威について語った(※1)。

またこの報道を反映してか、イスラエルに敵対するイランのアリー・ハーメネイー最高指導者はイランの学生に対して「サイバー戦争に備えるように」と述べたと2014年2月13日に報じられている(※2)。さらに当局担当者は、サイバースペースをめぐって、今後アメリカとイスラエルとの「重大な戦闘(decisive battle)」に備えるべきだと指摘している。

イランとイスラエルはサイバー攻撃をめぐっては今までにも様々な報道がされている。2010年にはイランの核施設を標的とした協力マルウェアStuxnetによるサイバー攻撃はアメリカとイスラエルによって行われたと報じられている。また2012年にはStuxnetに続く強力マルウェアFlameも同様にアメリカ、イスラエルによってイランに仕掛けられたと報じられたことがある(参考レポート)。そしてサウジアラビアやUAEの銀行やエネルギー関連の重要インフラ、イスラエルの多くの施設などにはイランからのサイバー攻撃が多く報じられている。

イスラエルとイランでは常時サイバースぺースをめぐって攻防が繰り広げられている。イスラエルでは徴兵に行く前の高校生くらいからプログラミングなどが優秀な学生を将来のサイバー部隊として養成していく。イスラエル国防軍(IDF)は第一次中東戦争最中の1948年に設立され、その後5回も大規模な戦争を経験しており、世界で最も練度の高い軍隊と評価されている。しかしサイバースペースをめぐる攻防では始まったばかりであり、サイバー技術は日進月歩で進化している。イスラエルはたしかに現在はサイバー技術に関しては非常に発展しており、世界で最先端といえるが、この優位性を維持することは容易ではない。サイバー技術はこれからも大きく発展していくと同時に、日常生活や経済活動だけでなく、安全保障に関わるあらゆる施設や組織がサイバースペースに依拠していく。そしてそのサイバースペースの防衛は国家の防衛と同義である。そしてこれはイスラエル、イランだけの問題ではない。

テルアビブのハキリヤにあるイスラエル国防省

テルアビブのハキリヤにあるイスラエル国防省

(出典:筆者撮影)

【参考動画】

*本情報は2014年2月16日時点のものである。

※1 UPI(2014) 31, jan 2014, “Israel combats cyberattacks, 'biggest revolution in warfare'”
http://www.upi.com/Business_News/Security-Industry/2014/01/31/Israel-combats-cyberattacks-biggest-revolution-in-warfare/UPI-24501391198261/

※2 RT(2014) 13, Feb 2014, “Iran’s supreme leader tells students to prepare for cyber war”
http://rt.com/news/iran-israel-cyber-war-899/

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