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Global Perspective 2014
2014年3月6日掲載

ブラジルワールドカップを標的としたサイバー攻撃への宣戦布告

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
副主任研究員 佐藤 仁

2014年6月にはブラジルでワールドカップが開催される予定である。そのワールドカップを狙って、ブラジル国内のハッカーがイバー攻撃の宣戦布告を行ったと2014年2月26日のロイターで報じられた(※1)。

「ワールドカップ反対」という意思表示としてのサイバー攻撃

ワールドカップの準備に費やされる約330億レアル(約140億ドル、約1兆4,000億円)という巨額の資金にブラジルの人々は激怒しており、それに対する抗議がサイバー攻撃の目的である。2013年6月には100万人以上のブラジル人が、そのような巨額の資金をワールドカップに使うのではなく、より良い公共サービス、資金の透明性、汚職の取り締まりや教育レベルを上げることを求めてデモを行った。その勢いにブラジル国内のハッカーたちが便乗してきた。ハッカーらはワールドカップ関連のサイトへの攻撃、システム破壊、情報摂取などあらゆるサイバー攻撃を行うとのことである。

いわゆる「ハクティビスト」らによる宣戦布告である。彼らは主義主張があり、サイバー攻撃を行う目的がはっきりしており、標的が明確である。単なる愉快犯ではないから、目的達成のために本気で攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。

ブラジルの当局側も、政府関連サイト、FIFA、サッカー関連サイトでのサイバー攻撃対策のほかに、オンライン犯罪や通信インフラへのサイバー攻撃に対する対策を急いでいるとのことである。ブラジルでは2012年にリオデジャネイロで開催された国連の環境会議の時には、サイバー攻撃に140のサイトが攻撃され侵入されていた。そして2013年にブラジルで開催されたコンフェデレーションカップの際には300以上のサイバー攻撃が検知されたとのことである。しかし、それらの検知された数字は「氷山の一角」であり、実際にはもっと多くの攻撃が仕掛けられていただろう。

ブラジル当局も2014年のワールドカップではさらに多くのサイバー攻撃が来て、2016年のリオデジャネイロのオリンピックではさらに多くのサイバー攻撃が来ることを想定している。

サイバー攻撃に脆弱なブラジルのサイバースペース

ブラジルは周辺諸国に敵国がないため、周辺諸国からのサイバー攻撃が少ないとロイターは報じている。すなわちブラジルはサイバー攻撃に対して脆弱である可能性が高い。周辺諸国との間で問題を抱えている国同士ではサイバー攻撃も非常に多い。ロシア、中東、朝鮮半島などがその例である。日本へのサイバー攻撃も周辺諸国からである。例えば日本がスイスやウルグアイからのサイバー攻撃に悩まされるということはほぼ皆無である。

そのような周辺諸国との問題を抱えており、常に周辺諸国からのサイバー攻撃の標的にされている国ではサイバー攻撃対策として常に様々な対策を講じているため、システムの脆弱性も少なく、サイバースペースが強固である。

大規模イベントに備えたサイバー攻撃

ブラジルは2014年にはワールドカップ、2016年にはオリンピックを開催する予定である。大規模なイベントは世界中が注目している。そのような時にはWebサイト改ざん、DoS攻撃、情報摂取、システム破壊といったサイバー攻撃や、偽チケットの販売のようなサイバー犯罪も多数発生する。ロンドンオリンピックの時にもサイバー攻撃は問題になっていた(関連レポート)。ソチオリンピックの際にも、サイバー攻撃は問題となりアメリカ政府などが警告を発した(関連レポート)。

サイバー攻撃は国によって、その目的や標的が異なってくる。ブラジルでは自国のハクティビストがサイバー攻撃を仕掛けようとしているようだ。サイバー攻撃は、その目的や標的は各国で異なるとは言え、その手法は全世界でほぼ共通している。どのようなサイバー攻撃にも防御できるような対策が必要である。

そして国によって、攻撃側の目的も変わってくるので、敵の顔やその背景と攻撃手法が見えることもあるから防御の対策が施しやすいこともある。日本は2020年に東京でオリンピックを開催する予定である。日本へのサイバー攻撃はどのような国から、どのような攻撃が来ているのかを正確に把握することによって防御の対策が立てやすくなる。

【参考動画】

(参考)

*本情報は2014年3月5日時点のものである。

※1 Reuter(2014), 26 Feb 2014, “Hackers target Brazil's World Cup for cyber attacks”
http://www.reuters.com/article/2014/02/26/us-worldcup-brazil-hackers-idUSBREA1P1DE20140226

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