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Global Perspective 2014
2014年3月27日掲載

自衛隊「サイバー防衛隊」発足:サイバースペースの防衛は国家の防衛

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
副主任研究員 佐藤 仁

防衛省は2014年3月25日、日々高度化・複雑化するサイバー攻撃の脅威に対処する自衛隊の専門部隊「サイバー防衛隊」を3月26日に発足させると発表した(※1)。サイバー防衛隊は、陸海空3自衛隊の自衛隊員ら約90人で編成し、東京市谷の防衛省内に設置するとのことである。24時間態勢で、防衛省・自衛隊のネットワークの監視やサイバー攻撃が発生した際の対応を担う。またサイバー攻撃に関する脅威情報の収集、分析、調査研究等を一元的に行う。防衛省・自衛隊としては、サイバースペースの安定的な利用の確保は日本の安全保障上重要な課題であることから、関係省庁等と協力しつつ、サイバー防衛隊を中核として自衛隊のサイバー攻撃対処能力の強化に向け積極的に取り組んでいく予定である。

サイバースペースの防衛は国家の防衛

諸外国ではサイバースペースの防衛は国防省や軍など安全保障に関わる組織が担当することが多い。アメリカの国防省(DoD)においてもサイバーセキュリティを「Top Issue」(トップイシュー)の1つとして掲げている。

サイバースペースを構成するシステムには多数の未知の脆弱性が存在し、それらを狙って攻撃をしかけてくるのがサイバー攻撃である。サイバースペースに依拠している現代社会において、サイバー攻撃による影響は計り知れない。最悪のケースはイランの核施設を標的としたStuxnetのような強力マルウェアを仕掛けられることによって、国内の重要インフラや防衛施設が停止、麻痺してしまうことであろう。

特に日本のような先進国ではサイバースペースへの依拠なしでは、安全保障だけでなく社会経済も成立しない。サイバースペースの防衛は国家の防衛と同義であり、国家の安全保障において最重要の分野である。

「防衛省では、他国からサイバー攻撃を受けた際、発信源を特定しウイルスを送り込むなどの反撃能力を保有するべきかどうかの検討も進んでいるが、専守防衛との整合性もあり、方針は決まっていない」と2014年3月25日の産経ニュースで報じられている(※2)。かつて軍事評論家の江畑謙介氏は、「サイバー攻撃を受けた時、必要と判断されるなら攻撃的なサイバー攻撃を実施でき、その実施に(違反がない限り)譴責されることがないという法的基盤を整えない限り、効果的なサイバー空間の防衛は難しいだろう」と2008年に述べていた(※3)。自衛隊が他国に対してサイバー攻撃を行うかどうかについても重ねて注目していきたい。

*本情報は2014年3月26日時点のものである。

※1 防衛省(2014年3月25日)「サイバー防衛隊の新編について」
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2014/03/25d.html

※2 産経ニュース(2014年3月25日)「自衛隊にサイバー防衛隊 24時間、90人態勢で発足」http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140325/plc14032518420021-n1.htm

※1 江畑謙介『日本に足りない軍事力』(青春出版社 2008)p275

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