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Global Perspective 2014
2014年4月3日掲載

欧州でもモバイル送金「M-Pesa」: Vodafoneのルーマニアでの取組み

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
副主任研究員 佐藤 仁

Vodafoneグループがルーマニアにおいてもモバイル送金「M-Pesa」の導入を行う予定であると報じられている(※1)。

「M-Pesa」は2007年にケニアで開始されたモバイル送金サービスで、銀行口座を所有していないユーザーでも携帯電話のショートメッセージ(SMS)を経由して送金、受取が可能なサービスである。仕組みを簡単に説明すると、送金したい人が代理店(町のキオスクのようなショップ)に行き、そこで送金したい金額分の「M-Pesa」を購入し、相手の電話番号、名前を伝える。その内容がSMSで受取者の携帯電話に届く。受取者はそのSMSとPINコード、身分証明書を持って代理店に行き、お金を受け取る仕組みである。ケニアだけで全国に79,000以上の代理店があり、地方からでも送金、受取が可能である。

現在、ケニアの他にタンザニア、南アフリカ、インド、アフガニスタンでも提供されており、全世界に1,700万の利用者、1か月で9億ドル(約900億円)の取引がある。特に地方から都会や海外に行った出稼ぎ労働者が故郷の家族らに送金することに多く利用される。

今回、欧州市場では初となるルーマニアにおいて「M-Pesa」を提供する。Vodafoneは同国において「M-Pesa」を展開するために金融事業の認可も当局から得ている。ルーマニアでは特に地方に行くほど、銀行口座を所有していないユーザーが多数存在しているため、モバイル送金の需要があると想定している。

ルーマニアの「M-Pesa」では1日につき1レウ(約0.3ドル)から30,000レウ(約9,257ドル)まで送金が可能である。

(表1)ルーマニアでの「M-Pesa」の送金手数料

(表1)ルーマニアでの「M-Pesa」の送金手数料

(表2)ルーマニアでの「M-Pesa」の払い戻し手数料

(表2)ルーマニアでの「M-Pesa」の払い戻し手数料

現在のようなグローバル社会では、世界中に蓄積された資本が地球を休みなく移動している。一方で、そのような資本移動の流れから取り残されている人々はまだたくさん存在している。モバイル送金はアフリカやアジアを中心にそれらの問題を解決してきた。実際に現在では1か月に9億ドルも全世界で取引がある。様々な問題や導入への課題を抱えてはいるが、これからも大きな成長が期待される。

モバイル送金はアフリカを中心とした途上国での銀行口座を所有していないユーザー向けのサービスのイメージが強く、実際にその通りである。Vodafoneでは「M-Pesa」サービスを欧州の他の新興国でも導入を検討しているとのこと。今回のルーマニアでのサービス提供を機に、今後も世界中で広がることによる世界規模での資金の流れの活性化が期待される。

*本情報は2014年3月31日時点のものである。

※1 GIGAOM(2014) 31 Mar 2014, “Mobile money revolution spreads to Europe as Vodafone brings M-Pesa to Romania”
http://gigaom.com/2014/03/31/mobile-money-revolution-spreads-to-europe-as-vodafone-brings-m-pesa-to-romania/
Financial Times(2014) 31 Mar 2014, “Africa’s digital money heads to Europe”
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/736dd03e-b688-11e3-b230-00144feabdc0.html#axzz2xXrq54nD

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