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2014年8月5日掲載 |
カナダ政府は2014年7月29日、中国のハッカー集団からカナダの政府系研究機関(National Research Council:NRC)の主要なコンピュータネットワークへサイバー攻撃を受けたとして、中国政府を批判した(※1)。カナダは過去に何回ものサイバー攻撃を受けているが、中国政府を名指しで批判するのは初めてとのこと。 カナダ政府の情報担当責任者、コリン・シャレット氏は報告書で、NRCのシステムは予防的措置として政府のシステムとは隔離されていると説明した。 中国側は当然、いつものように否定している。オタワの中国大使館のLuo Zhaohui氏はトロントの「Globe and Mail newspaper」のインタビューで「中国がサイバー攻撃をしかけたという証拠があるのなら提出すべきで、中国はそれを元に調査を行う。事実無根である」とコメントしている(※2)。また、中国外務省の秦剛報道官は7月31日に談話を発表し、「信用できる証拠が乏しいなかで、カナダ側がいわれなく中国を非難するのは無責任であり、中国は断固反対する」と反発した。 カナダのベアード外相が中国を訪問しており、中国の李源潮国家副主席らと会談し、両国間で資源、金融、農業などの分野で協力し、互いの利益を拡大していきたいと協議を行っている最中の出来事であった。 サイバー攻撃の舌戦は2か国間の緊張関係が基底カナダには中国人移民がたくさんいる。また労働者として移民してきた中国人以外にも、中国の裕福な中流層がカナダで住宅を買い占めていることが問題になっているニュースもよく耳にする。Asia-Pacific Foundation of Canadaが2014年6月に発表した調査によると、カナダの31%が中国に対して「好ましくない(unfavorable)」と感じている。また中国との貿易には56%が反対で、カナダの成長にとって中国市場が重要であると考えているのは35%しかいない(※3)。 カナダは過去にも政府や金融機関がサイバー攻撃を受けてきた。しかしこれまで、カナダ政府が中国を名指しで批判することはなかった。今回、カナダ政府が中国を名指しで批判する背景には、カナダと中国の国家間関係もあるのだろう。サイバー攻撃は「やられた」「やってない」の舌戦である。また本当に中国からの攻撃があったとしても、中国政府が関与していない場合は把握することも難しい。 サイバー攻撃での名指しの批判は、米中の間ではよくあることだが、今回カナダが中国を名指しで批判したように、今後はもっと増加してくる可能性がある。そしてその基底には、攻撃された国と批判される国の国家間の緊張関係がある。米中以外では、例えばインドとパキスタン、韓国と北朝鮮ではサイバー攻撃の「やられた」「やっていない」の舌戦が常時繰り広げられている。そこにカナダと中国も追加されるのだろうか、今後の両国の関係を注視していく必要がある。 【参考動画】 *本情報は2014年8月4日時点のものである。 ※1 Wallstreet Journal (2014) 1, Aug 2014, “Canada, China Tensions Rise On Cyberattack” “China slams Canada for 'irresponsible' hacking accusations” ※2 Globe and Mail newspaper (2014) 1, Aug 2014, “China challenges Canada to produce evidence of cyberattacks” ※3 Polling released in June by the Asia-Pacific Foundation of Canada, for instance, indicate 56% of Canadians oppose a trade deal with China; only 35% suggest China is an important market for Canadian growth; and 31% held an "unfavorable" view of China. |
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