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Global Perspective 2014
2014年8月14日掲載

イスラエルのガザ攻撃に対するアノニマスによるサイバー攻撃は効果があるのか?

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
副主任研究員 佐藤 仁

イスラエルとパレスチナ自治区ガザの問題は、毎日ニュースで報じられている。ロケット攻撃や空爆も続いているようだが、先日、戦闘終結を目指してイスラエルとパレスチナの間接的な交渉が、エジプトのカイロで再開されたとのこと。

そのような中で、イスラエルの政府機関などの主要なサイトへ、世界中のアノニマスからのサイバー攻撃が行われ、主要なサイトがダウンしたと報じられた(※1)。イスラエルは平時からサイバー攻撃に慣れている。イスラエルは常に周辺アラブ諸国などからのサイバー攻撃の標的されており、恐らくアメリカと並んで世界で最もサイバー攻撃を受けている国の1つであろう。

アノニマスの主張は明確でアノニマスのスポークスマンによると、「イスラエル政府がガザの一般市民を虐殺して、国土を広げようとしていること」(”it hates that Israel's government is committing genocide & slaughtering unarmed people in Gaza to obtain more land at the border.")に反対している。

アノニマスからのサイバー攻撃は基本的にはDDoS攻撃やハッキングである。それによって、イスラエル軍、政府、保健省、イスラエル銀行などの政府機関のサイトがダウンしたそうだ。イスラエル財務省のサイトには1,000万、イスラエル外務省には700万、首相の公式サイトには300万のサイバー攻撃があった。しかし、それらのサイバー攻撃があったからといって、イスラエルはパレスチナ自治区ガザへの攻撃は緩和も停止もしていない。

たしかにアノニマスのサイバー攻撃は「抗議」の意味としては大きいかもしれないが、それによって実際に戦争は終結していない。またサイバー攻撃を受けたサイト自体も本原稿執筆時には、全て復旧しており、アクセス可能である。

戦闘発生時において、サイバー攻撃は主張にはなるかもしれないが、実際の戦闘や空爆が停止に追い込まれることはない。

安全保障上、一番恐ろしいサイバー攻撃は2010年にアメリカとイスラエルがイランの核施設を標的にしたStuxnetであろう。そのような実際の核施設などを狙ったサイバー攻撃は安全保障の観点からも脅威である。また平時においては情報摂取を目的としたサイバー攻撃も存在するが、安全保障の観点からは大きな脅威ではない。

戦闘が開始されてしまってからのアノニマスによるDDoS攻撃やハッキングによるサイバー攻撃は、「抗議の意思表示」にはなるが、安全保障の観点や実際の戦闘には大きな影響を与えない。もっとも平時からサイバー攻撃に慣れているイスラエル政府が、戦時にサイバー攻撃を受けたくらいで実際の空爆を停止するとは思えない。アノニマスは、今後どのようなサイバー攻撃で「抗議の意思表示」をしていくのだろうか。

【参考動画】

*本情報は2014年8月13日時点のものである。

※1 Forbes 11 Aug 2014, “Data Breach Bulletin: Anonymous Launches Cyber Attack on Israeli Websites”
http://www.forbes.com/sites/katevinton/2014/08/11/data-breach-bulletin-anonymous-launches-cyber-attack-on-israeli-websites/

3 Aug 2014, “Anonymous Declares Cyber War on Israel, Downs Mossad Site, Many Others”
http://blackbag.gawker.com/anonymous-declares-cyber-war-on-israel-downs-mossad-si-1615500861/+barrett

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