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2014年11月5日掲載 |
アメリカを訪問していた中国の楊(Yang Jiechi)国務委員は2014年10月18日、アメリカのケリー国務長官と会談を行った。その中でサイバーセキュリティについても話題になった(※1)。それでも今回はエボラ、香港での学生暴動、イスラム国など話題が多かったのでサイバーセキュリティについての言及は小さかった。 今回は中国の楊国務委員がケリー国務長官に対して、「アメリカの誤った行動のため、米中間でサイバーセキュリティの問題について対話と協力を再開するのは難しい。アメリカは二国間で対話と協力を再開するための必要なポジティブなアクションを取るべきだ」とコメントした。(“Due to mistaken US practices, it is difficult at this juncture to resume Sino-US cyber security dialogue and cooperation,” “the United States should take positive action to create necessary conditions for bilateral cyber security dialogue and cooperation to resume") 米中間ではどのようなレベルでの会談によってもサイバーセキュリティは議題になる。そして常にいつも平行線のままである。今回も米中の国務長官の会談においてもサイバーセキュリティをめぐっては具体的な結論は何も出なかった。 2013年にはスノーデンが、アメリカNSAが中国に対してサイバー攻撃を行っていたことを暴露したり、2014年5月に中国軍がアメリカ企業にサイバー攻撃を仕掛けているということでアメリカ当局が5人を起訴したりなど米中間でのサイバーセキュリティをめぐっては相互で不信感が高まっている。このような状況を踏まえて、今回中国の楊国務委員はアメリカとサイバーセキュリティ分野での対再開はできないとのコメントになったのだろう。 ケリー国務長官も「中国とのサイバースペースの問題について、態度を軟化することはない」と牽制している(※2)。 米中間でサイバーセキュリティをめぐっては常に「舌戦」である。「サイバー攻撃を受けている」と「サイバー攻撃をやっているのは相手側」であることを常に主張している。 「舌戦」になってしまうが、米中間でサイバーセキュリティが対話に上がることだけでも重要であろう。「対話」と「抑止」は国際政治の基本である。そして特に大国間同士では重要である。対話が行われ、サイバーセキュリティがイシューとして米中間でテーブルに上がっているうちはまだよい。つまり、お互いが相手側からのサイバー攻撃を意識していることであり、牽制を目的として対話している。そこには抑止効果もある。これからも米中間でのサイバーセキュリティの問題では「舌戦」が続くであろう。そして現代社会はサイバースペースに依拠しており、そこの脆弱性を突いた攻撃であるサイバー攻撃はこれからも続いていく。米中でのサイバーセキュリティをめぐる舌戦は、これからも平行線のままで帰着点が簡単に見つかることはない。ただし、その舌戦で相互がどのような発言をするかは、定点的に観測していくべきであろう。何かしらのシグナルを相手側および国際社会に対して発している。 「抑止」の観点では、米国家安全保障局(NSA)のロジャーズ局長が2013年10月28日、米政府、企業を標的にしたサイバー攻撃を阻止するため、サイバー技術を用いた報復能力を保持し、「抑止力」を構築することを検討していると述べたことが報じられた(※3)。局長はサイバー攻撃について「(実行する側の)大多数は、自らの行為がほとんど代償を伴わないとの結論に達している」と指摘し、「他者がこうした考えを抱くことは、米国の長期的利益にかなわない」と強調し、報復的サイバー攻撃をめぐる規則を検討していると明らかにした。また中国発のサイバー攻撃に関し「中国側には懸念していると強く訴えてきた。われわれが望む対中関係と相いれない」と批判した。同日にはホワイトハウスのコンピューターネットワークに対してサイバー攻撃の標的になっていることが明らかにされたばかりである(※4)。まだまだ米中をめぐるサイバー攻撃の戦いは終わらない。 【参考動画】 *本情報は2014年11月3日時点のものである。 ※1 The Guardian(2014)19 Oct 2014, “China says US must change 'mistaken policies' before deal on cyber security” ※2 US Department of State(2014) 18 Oct 2014, “Remarks on Secretary Kerry's Meeting With Chinese State Councilor Yang Jiechi” ※3 時事ドットコム(2014年10月29日)「サイバー攻撃への抑止力構築=中国の活動に懸念−米NSA局長」 ※4 Washington Post(2014) 28 Oct 2014, “Hackers breach some White House computers” |
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