LINE、新たなサービスポートフォリオ拡大としてマイクロソフトからMixRadioを買収

LINEは2014年12月19日、米マイクロソフトから音楽配信サービス事業者の英MixRadioを買収することを発表した（※1）。買収額などの詳細は明らかにしていない。MixRadioは、Windows Phone「Lumia」シリーズ向けにラジオ型音楽配信サービス「MixRadio」を開発・提供しているマイクロソフト子会社である。

新たなサービスポートフォリオとしての「ラジオ型音楽配信サービス」

MixRadioはユーザーが自分専用のラジオチャンネルを作り、好みに合わせた独自のプレイリストをストリーミングで配信できるモバイル向けのサービス。音楽の専門家たちで構成されたチームが収集・制作した幅広いジャンルのプレイリストを利用できることがウリである。

MixRadioはもともとフィンランドのノキアが手掛けていた事業で、世界31カ国でサービスを提供して数百万のリスナーがいる。2014年4月にマイクロソフトがノキアの携帯電話事業を買収したとき、MixRadioもマイクロソフト傘下となった。一方で、マイクロソフトはMixRadioとの相乗効果が大きくないことから、売却先を探していた。ノキアが2007年に立ち上げた携帯向け音楽サービス「Nokia Music Store」をベースにしており、現在はWindows Phoneや、家庭用のオーディオやウェアラブルデバイスなどで利用できる。LINEによる買収完了後は、サードパーティーとしてマイクロソフトのWindows Phone「Lumia」向けの開発を継続する予定。

LINEの月間利用者数は世界230か国で1億7,000万人だが、そのほとんどが日本と東南アジアで半数以上を占めている。
今後は欧米の普及が課題となっている。但し、MixRadioを傘下におさめたからといって、すぐに欧米でLINE利用者が急増することは考えにくい。またMixRadioの利用者は世界31か国で数百万人ということはLINEと比較しても、非常に規模が小さいサービスである。

LINEはメッセンジャーアプリ以外にもゲームや音楽配信など様々なジャンルの分野に進出しようとしている（参考：LINE：メッセンジャーアプリから生活支援およびエンタメプラットフォームへ）。今回のMixRadio買収もその一環である。

メッセンジャーアプリの利用者が増加しても、それは無料で利用できることから、LINEにとって収益にはほとんど直結しない。現在のLINEの収益のほとんどがゲームとスタンプ販売である。LINEでは無料で利用できるメッセンジャーアプリでユーザーの裾野を拡大し、そこに集まったユーザーに様々なコンテンツやサービスを提供することによって、そこから収益を上げることが重要である。つまり、月間利用者数は世界230か国で1億7,000万人を超えても、そのうち「どのくらいの人がお金を使ってくれるか」が重要になる。また、欧米ではMixRadioのサービスがトリガーとなってLINEを利用し始めるようになる人も出てくる可能性もある。

日本でこそメッセンジャーアプリといえば「LINE」であるが、海外ではFacebook傘下の「WhatsApp」、中国系の「WeChat」、楽天に買収された「Viber」など競争が非常に激しい。またメッセンジャーアプリだけでは差別化が難しくなってきている。そのため、様々なコンテンツやサービスの充実は各社にとっても急務になっている。

なお、LINEは2014年12月11日に、エイベックス・デジタルおよびソニー・ミュージックエンタテインメントと合弁で音楽配信新会社「LINE MUSIC」を設立し、3社で音楽配信サービス「LINE MUSIC」の提供に向けて協議を進めていくことを発表したばかりである（※2）。今回買収したMixRadioは「LINE MUSIC」とは別サービスとして運営していくとのこと。

MixRadioがLINEの傘下に入り、どのように進化し、それぞれにどのような相乗効果をもたらすのか、楽しみである。

（出典：LINE）

＊本情報は2014年12月19日時点のものである。