香港テレコム・インタラクティブ・マルチメディア・サービス
香港
- [基礎データ]
- 人口:619万(1995)
人当たりのGDP:21,650ドル(1994)
電話回線数:4,267,600回線(普及率:52.0%)(1996.3)
セルラー電話加入数:1,210,600万(97.1)
1香港ドル:約16.8円
- [電気通信市場の自由化と中国との関係]
- 電気通信サービスは長年にわたり、域内および域外(国際)の両分野ともに香港テレコムの独占だった。しかし1993年、香港政庁は基本電気通信サービスの市場開放政策を決定し、規制機関として電気通信管理局(OFTA)を設立した。OFTAはこの政策に基づき、香港テレコム以外の3社に、域内電気通信サービス免許を付与することとしたが、これらの免許期間(15年)は中国本土返還の時期にかかるため、中国政府との事前調整を続けて、95年になってようやく営業免許が付与された。現在香港では、香港テレコム、ハチソンコミュニケーションズ、ニューT&T、ニューワールドテレホンの4社が、域内基本電気通信サービスを提供している。域外通信サービスについては、2006年まで香港テレコムの独占が認められている。
WTO基本電気通信サービス交渉においては、香港は、国際音声、データ、ファックスのリセール、国際コールバック・サービス、クローズド・ユーザ・グループ(CUG)向け国際電気通信サービスについては開放するとのオファーを提出した模様である。外資規制については、国際音声・データ・ファックスのリセラーセールおよびCUG向け国際電気通信サービスの100%所有・管理を外国電気通信事業者に認める方向のようである。
本年5月には、CITICパシフィック の保有する香港テレコムの株式7.7%を、光大実業(China Everbright Holdings:国務院傘下の投資会社)が購入し、香港の中国返還を目前にひかえた中国政府が、香港に対する影響力を強めるための動きとも見られている。香港テレコムの株式のうち59%は、依然として英国のケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)社が保有しているが、香港の報道機関・アナリストは、7月1日以降、中国政府がC&W社に対して、持株比率を約25%まで引下げるように要請するであろう、とする見解と、1国2制度の下では、C&Wに売却を強制することができないとする見解に分かれている。香港テレコムとしては、中国の通信事業者との結びつきを深めることで、中国本土の契約の入札において大きな影響力を持つことになる。
香港テレコム・インタラクティブ・マルチメディア・サービス
(HKT Interactive Multimedia Services Ltd.)
これまでに紹介したシンガポールやマレーシアが、政府主導でマルチメディア・プロジェクトを進めているのとは異なり、香港では民間企業である香港テレコムがマルチメディア・サービスの計画を進めている。
香港テレコムは、香港インタラクティブ・マルチメディア・サービス(IMS:香港テレコムの100%子会社)を設立して、インターネット・アクセスや、VODのような住宅用ユーザ向けの広帯域サービスの商用化を計画している。香港のマルチメディア事業への参入により、香港テレコムは、新たな収入源を確保したい考えである。
しかしながら、香港テレコムのVOD計画に対して、香港のCATVサービス・プロバイダーであるワーフ・ケーブルが、VODはCATVであり、ワーフのCATV独占権に抵触するとして、裁判所の見解を求めた。1996年3月には最高法院が、VODは放送ではないとの判決を下し、ワーフは同年4月に訴訟を取り下げたものの、VOD免許は本年7月9日までに2免許が付与されることになり、香港テレコムはそれにあわせて商用サービスを開始する予定である。7月あるいは8月の開始当初は約2,500世帯を対象とし、完全なサービス開始は10月としている。
香港テレコムIMSは、今後2年間に20億香港ドル以上を投資して、VOD、ミュージック・オン・デマンド、ホーム・ショッピングやホーム・バンキングを通じてインタラクティブ・サービスの提供を計画している。同社は、すでにサービス開発のために4億香港ドルを投資しており、今度10年間で合計100億香港ドル以上が必要になると見られている。
香港テレコムのこれまでの取り組み状況
- 1994年
- 11月に同社の従業員50世帯を対象にVOD実験(ADSLモデムを利用し、電話回線を通じた番組伝送実験)を実施
- 1995年
- 400世帯を対象に試行サービスを提供。各世帯の1週間の平均利用額は30〜50香港ドルとなり、VODに対する需要が旺盛であることを確認した。
- 1996年
- 7月導入予定の商用VODについて、同年3月に97年半ばまでの導入延期を発表(1997年7月9日開始予定)。
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武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp |