インドネシア、PTテルコムの株式放出に遅れ
インドネシア最大の国内通信事業者であるPTテルコムの株式放出に遅れが生じる模様である。PTテルコムは現在、全国5地域で共同運営によるKSO(Kerja Sama Operasi:共同運用方式)による*プロジェクトを進めているが、各コンソーシアムに参加する海外のオペレータとの協議の不調から売却を推進できない状況である。
*KSO方式: |
全国を7地域に分割し、ジャカルタとスラバヤ以外の5地域の運営をBOT(Build-Operate-Transfer)方式で外国通信事業者を含む民間コンソーシアムに委託するもの。KSO方式の場合、各コンソーシアムは、PTテルコムが保有している既存の回線および従業員も引継ぎ、増設電気通信網の設計、建設、運営など一連の業務を行うことになっている。 |
これまでの経緯
インドネシアでは、PTテルコム(政府が71%の株式を保有)が国内、移動体通信サービスを、PTインドサット(65%を保有)が国際通信サービスを独占的に提供していたが、順次競争が導入されている。政府は、1998年3月、PTテルコムとPTインドサットの株式放出を決定したほか、KSOプロジェクトの履行期限の延期を決めている。
- 1.PTテルコム、PTインドサットの株式放出
- 政府はIMFの支援策を受入れる条件の1つとして、PTテルコム、PTインドサットを含む5社の株式を1999年3月までに外資に開放することを発表した。具体的な売却方法等は不明であるが、一部民営化された後も外資の出資上限は35%が維持される模様である。
- 2.KSOプロジェクトの履行期限延期
- インドネシア政府はまた、KSO方式で進められている200万回線の増設計画の期限を9ヶ月間延長することを決定した。昨年来の経済危機の影響による資金不足で、各コンソーシアムとも工事が進まず、1997年12月までに5社が敷設した回線数の合計は、最終目標である200万回線の25%にしか満たないとされている。ミトラ・グローバルを除く4社については、工事が中断しており、最終期限までに目標を達成することはほとんど不可能な状態であった。
インドネシア政府は、KSOプロジェクトの履行期限について、当初予定の1999年3月31日から9ヵ月延長し、1999年12月31日とすることを決定した。期限延長は無条件で行われ、各コンソーシアムに対して工事遅延に対するペナルティは課されない。また4月には、各コンソーシアムからPTテルコムへの支払が義務づけられている年間最低支払金と収益に一定率を乗じた収益分配金の徴収が一時延期されることが決まっている。しかしこうした対応策にも関らず、KSOオペレータ各社の厳しい状況に進展は見られないことから、各コンソーシアムの財務状況および工事の進捗状況により、目標回線数を見直すことも予想されていた。
KSOオペレータは支払額の削減を要求しており、PTテルコムは多少の減額には応じたものの、さらなる譲歩が必要であるとの見方がある。一方、国際通信を提供しているPTインドサットの利益率は高く、同社の株式売却に際して障害はほとんどないと言われている。 |
武川 恵美
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