ホーム > レポート > Hyper Asia > |
2000年9月掲載 |
旧香港テレコムの買収・合併完了
今月のHyper Asiaは、「2000年8月17日、旧香港テレコムの買収・合併が完了」という記事(朝日8.18)を受けて、中国返還後の香港の電気通信動向を、香港テレコムを中心に述べる。
■香港のPCCW、旧香港テレコムを買収
PCCWは、2000年2月29日、英ケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)と、C&Wが保有する香港のケーブル・アンド・ワイヤレスHKT(HKT)とPCCWが合併することで合意した。1999年11月以来、HKTはシンガポール・テレコムとも合併交渉を続けていたが、香港の新興勢力であるPCCWの勝利で決着した。 PCCWの買収提案によると、HKT株主は
PCCWは新会社の35%以上を所有する単独筆頭株主になり、HKTとPCCWのそれぞれの現株主であるチャイナテレコム(香港)、インテル等も新会社の少数株主として参加する。C&Wは、新会社においても最大20%前後の株式を保有するが、長期的にPCCW-HKTの株主に留まりつづけるかどうかは未定としている。 その後、世界的なネット株急落を背景に、PCCW株が大幅に下落したため、2月末の合意通りに買収が実現できるかどうか危ぶむ声が出ていた。買収合戦に破れたシンガポール・テレコムが再びHKTに触手を延ばす観測も浮上していた(日経新聞2000.4.28)が、3月〜6月に行われた株主投票により承認され、8月18日、PCCWとHKTの合併が完了した。 「世界最大の広帯域インターネット企業」を目指すPCCWは、HKTとの合併合意前から、子会社のパシフィック・コンバージェンス・コーポレーションを通じて、2000年以降、衛星等を利用した広帯域インターネット・サービスを開始する構想を発表しており、HKTのインフラはこの計画の実現性を一気に高めるものと見られる。 だがHKTは、競争の進む香港の通信市場で現在、守勢に立たされており、通信分野で実績のないベンチャー企業が、今後どのような戦略を打ち出すのかに注目が集まる。その1つとして、合併完了後に、PCCWはHKTの不採算部門を分離するとともに、新たな海外事業者を戦略的パートナーとして検討するのではないかと見られている。 図表:C&W HKTとPCCWのファクトシート
■PCCWとは?パシフィック・センチュリー・サイバーワークス(PCCW)は、不動産開発を主要事業とするパシフィック・センチュリー・グループ・ホールディングス(PCG)に属している。PCGは、香港政府と共同で、香港島の南部にハイテク産業基地「サイバーポート」を建設する計画を進めている。KDD総研R&A(2000.3)によると、その資金調達のための「裏口上場」の目的で、PCGは1999年5月に香港上場企業のトライコム・ホールディングズを買収し、サイバーポートの開発権および香港・中国本土の不動産等の資産を注入、社名を「PCCW」に改めて、グループの旗艦投資会社とした。PCCWはネット株ブームの追い風を受けて、設立後半年余の短期間に時価総額で香港で十指に入る企業に急成長したが、実際は現実の収益に結びつくような事業をこれまで持っていなかった。同社にとってはHKTは初めて手に入れた「本物の資産」と言われている。 またPCCWは、日本市場への投資を積極的に進めている。トーメン系ケーブルテレビ統括会社の「トーメンメディアコム」と資本業務提携を公表しているほか、8月11日には、子会社を通じて、ゲームソフト開発会社「ジャレコ」の株式を過半数取得し、事実上買収することで合意している(日経産業2000.8.11)。 ジャレコは、業務用ゲーム機や家庭用ゲーム機など複数のプラットフォーム向けにゲームソフトを開発しており、アニメ制作などの技術力で定評がある。アジア地域での広帯域インターネットによる動画配信や電子商取引サービスの展開を模索するPCCWにとって、ジャレコ買収は、単なる日本での拠点確立という意味以上に、世界に向けた日本発のコンテンツ配信で大きな意味を持つ。 ■旧香港テレコム株式売却の経緯C&Wは、中国の電気通信市場参入のため、香港の中国返還前後から、チャイナ・テレコム(香港)に対して、自社株式を売却してきた。図表:香港テレコムと中国との関係
しかし中国が電気通信市場の開放を進展させないため、C&Wは、インターネット、データ通信および電子商取引に重点をおくよう方針を転換した。シンガポールでは、香港と同様に2000年4月から競争が導入されるため、お互いの体力のあるうちに、シンガポール・テレコム*とHKTの対等合併に向けた交渉が開始された。 *シンガポール・テレコムとの交渉がまとまらなかった背景には、中国政府ならびに香港政府が、両社の合併により、HKTがシンガポール政府の管理下に置かれることを嫌ったためと見られている(Infocom Quick Updates 2000.2.8)。 ■香港の電気通信市場
図表:香港のFTNS事業者の概要
*ケーブル設備による域外FTNS免許は、免許発給に関する趣意書(LOI)であり、今後、ケーブルの建設保守、陸揚げ等に関する関係各方面との協議を終え、かつ履行保証金の支払いに同意した時点で正式な免許を取得できる、LOIの有効期限は18ヶ月。 国際通信の料金はISR解禁後、急激に値下がりしており、99年末には一時、香港からカナダへの平日昼間の通話料金として、0.37香港ドル(約5円)を提示する電話会社まで現われた。急激な値下げはHKTの収益を圧迫しており、2000年3月期には国際通信部門の収入が前期3割減、純利益が9割の減少となっている(日経 2000.7.7)。 図表:アジア主要国・地域からの日本への国際電話料金
*各国の代表的な電話会社の通常料金のうち、平日昼間の最初の1分(香港の1年前は98年末の料金)
図表:香港の携帯電話・PCS事業者
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
NTT西日本 企画部 武川 恵美 編集室宛 nl@icr.co.jp |
▲このページのトップへ
|
InfoComニューズレター |
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。 InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。 |