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2000年10月掲載 |
タイ電話公社、民営化決定
日経新聞の「タイ、きょう民営化決定」(2000.9.26)および「タイ電話公社の民営化決定」(9.27)の記事を受けて、タイの民営化と今後の課題について述べる。タイ電話公社(TOT)およびタイ通信公社(CAT)の民営化は、1995年初頭、政府が民営化を盛り込んだ電気通信マスタープラン策定に着手した後、政権交代などから何度も棚上げされてきた。通貨危機の発端となったタイでは、IMFがタイ経済救済策の一環として民営化を要請し、一旦はTOTを99年に、CATを98年後半に民営化すると決めたものの、その後見送られている。
■民営化の概要
民営化されるのは、TOT(国内通信およびラオス、マレーシアの国際通信を担当)とCAT(国際通信・郵便を担当)。CATの郵便事業も通信とは別に分離・独立させる。2つの通信新会社は、新設の政府持株会社が統括し、まず25%を国際入札で外資に売却する。その後上場し、さらに段階的に42%を売却する。残る33%のうち3%を社員に割当て、政府が30%の保有を続ける計画だ。 売却時期については、閣議で任命される専門委員が詰めるが、CATが2001年に外資入札、2002年に上場との見方が有力。TOTも続いて民営化手続きに入り、2006年までに完了する。
タイ政府は、世界貿易機関(WTO)に対し、2006年に100%外資企業の通信参入を認めると公約している。公社の民営化で国際競争に備えると同時に、割高な電話料金を引下げ、国内の通信・IT市場を刺激することを狙っている。 ■体制・法制度電気通信政策や料金規制の一部については、現在、運輸通信省(MOTC)および内閣が、電波管理・国際機関対応等の国際業務については郵電総局(PTD)が所管している。電気通信サービスはTOTおよびCATの2公社が独占的に提供してきた。タイにおいて特徴的なのは、両公社が事業体であると同時に、実質的な規制体としての権限も保有している点である。 タイ政府は、2006年の電気通信市場の自由化に向けて、以下のような抜本的体制、法制度の見直しが進めている。
電気通信規制体については、MOTCが持つ監督機能を分離し、独立組織として発足させる予定である。2000年3月6日には「NTC-NCB法」(NCB:放送委員会)が発効しており、2001年に独立規制委員会NTCが設立される。NTCは、電気通信、教育、文化、経済、公法、治安、科学技術の各専門家7名で構成され、政策から規制、R&Dまで幅広い機能を持つ。しかしながら、公社の民営化およびコンセッション(事業権)の変更については依然、内閣の権限である。 新電気通信法案については、現在、国会で審議中である。新規参入者は免許を受ける必要がある一方、両公社は自動的に新電気通信法上の免許が与えられる。しかし、免許の種類などをはじめ、詳細はすべてNTCに委任される模様であり、具体的な規則はNTCの設立を待つ必要がある。 TOTおよびCATの組織や戦略については、新たに設立される持株会社等の判断に委ねられ、NTCの権限外であるため、両公社による互いの市場への相互参入などを認めるかどうかは不透明である。 ■BTO事業者の今後両公社は、1990年から、独占権を維持しながらBTO(Built−Transfer−Operate)方式により民間企業に事業権を与え、電気通信網の建設・運営を委託させてきた。 BTO事業者は、売上の相当部分(最大45.5%)を20〜30年間、事業権料として公社に支払う契約を結んでいる。内閣は、BTO方式の導入は、公社の独占権を前提にしているにも関わらず、この契約が私的契約であるとして、自由化後の新体制・法令の下でも、BTO事業者は従来通りTOT/CATへの事業権料の支払いを継続しなければならないと決定した。事業権料の支払いは、TOT等の公社に株式等で一括返済(結果的にTOT等の子会社化)することも可能である。一方、新規参入者にはこのような事業権料は課されない。
固定電話網のBTO事業者は、特に、回線容量の余剰、経済危機に伴う収入の大幅減や借入負担の増大により、巨額の債務を抱え、債務リストラに追われている。電話収入については、経済危機以降、電話1回線当たりの収入が約200ドル/年と非常に低く、これも通貨価値が3分の1に減少したインドネシアの150ドルと同程度となった。これは、トラヒックの減少だけでなく、携帯電話に長距離通信を奪われていることが大きく影響していると言われており、TOTは長距離通話の割引オプションを採用し、インターネット電話も開始予定である。CATは1999年末にインターネット電話を開始している。 免許付与はNTCの権限であるが、事業権料に対する権限は持たないため、巨額の事業権料の負担を課されるBTO事業者と新規参入者の間で、公正な競争を実現するのは非常に困難であろう。 *今回の執筆にあたっては、杉山博史氏の「タイ国電気通信の現状と課題」(ITUジャーナル2000.9)を参考にさせていただいた。 |
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NTT西日本 企画部 武川 恵美 編集室宛 nl@icr.co.jp |
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