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ハイパーアジア
2001年2月掲載

台湾で固定電話の自由化推進

 台湾の民間電話会社である東森寛頻電信が、2001年2月中旬に固定網で長距離と国際電話サービス、4月に市内電話サービスを開始すると発表した。台湾の電気通信市場は中華電信が長く独占してきたが、1997年に携帯電話事業が自由化されたのに続いて、固定網への参入も規制緩和が進められている

■自由化の経緯

 台湾の電気通信市場の自由化は、1980年代から3段階に分けて進められてきたが、固定網事業の開放はその計画の最終段階に当たるものである。

図表1:台湾の通信規制緩和

(KDD総研R&A 2000.4月号を元に作成

第1段階 1989年〜VANサービスの開放
第2段階 1994年〜移動体通信事業の開放
 1994.11 900MHzデジタル・コードレス電話サービス(CT-2)開放
 1996.12 GSM(900MHz/1.8GHz)開放
 1999. 6  1.9GHzデジタル・コードレス電話サービス開放
 *次世代携帯電話サービスについては、現在スケジュールを検討中
第3段階 1996年〜衛星通信および固定通信網事業の開放
 1996. 4 国内VSATデータ通信サービス開放
 1998. 6 衛星携帯電話事業(国内・国際)、衛星固定通信事業(国内・国際)開放
 1999. 6 通信網リース事業(国内)開放
 1999.12 総合固定通信網事業(市内・長距離・国際)開放
 *固定通信網事業の「市内」「長距離」「国際」の個別免許の開放
 スケジュールについては2001年7月以降決定される予定

 規制機関である台湾交通部は、2000年3月、東森のほか、携帯電話事業を展開する遠東・和信グループの「新世紀資通」、太平洋電線電纜グループの「台湾固網」の3コンソーシアムに総合固定網事業者免許を付与することを決定した。総合固定網免許は、これまで中華電信が独占してきた市内・長距離・国際通信のほか、専用線等の固定網通信の全般を取扱う免許である。免許の有効期間は25年で、免許取得後、半年以内に営業を開始しなければ免許を取消される場合もあり、各コンソーシアムは、2000年末までのサービス開始を予定していた。

■固定網免許取得者の概要

 免許が付与された3コンソーシアムは、いずれも携帯電話、CATV等の分野で通信サービスに関ってきた実績のある企業が中心となり、かねてから固定通信網サービスへの参入を表明していたグループである。

図表2:台湾の総合固定網免許取得者

KDD総研R&A 2000.4月号)

コンソーシアム名

主要株主

システム・
ベンダー

現地資本

外資

国営企業

東森寛頻電信 力覇関係企業(中国力覇、嘉新食品、中華銀行、友聯保険、東森媒体)計30%、国民党党営事業(中央投資、齋魯、中央産物保険、光華投資、華夏投資、中廣、中影、啓聖、景徳投資)計10%、宏泰グループ、交通銀行、彰化銀行、中鋼、新光グループ、東元、明台、東南セメント、華栄、他 ドイツ・テレコム(20%) 台湾鉄道(20%) アルカテル
シスコ
ベルコア
新世紀資通 遠紡(21%)、亜泥(アジアセメント:20%)中華開発(10%)、統一グループ(10%)、華新麗華、國寿、和信、互盛資通、中國電視、台湾工業銀行、資訊伝真、精業(各2~4%) シンガポール・テレコム(18%) 台湾電力(10%) ノーテル
ルーセント
シスコ
台湾固網 太平洋電線電纜(20%)、富邦、大陸工程、宏碁(Acer)、長栄(各7.5%)、台湾大哥大(5%)、國巨(3%)、新光、東元、智邦、鴻海、日月光、震旦行 GTE
(現Verizon)(15%)
台湾電力(10%) シーメンス
シスコ

◆東森寛頻電信(Eastern Boardband Telecom)
 東森の主導者である力覇は台湾の大手財閥グループで、特に台湾の2大CATV局の1つを傘下に持ち、CATV回線を利用したISP「東森多媒体(東森マルチメディア)」を運営している。各家庭に引いたCATV網を市内電話に転用する。加えて、台湾鉄道管理局が所有している光ケーブル網を利用できることが、東森寛頻電信の最大の強みである。

 日経新聞(2000.1.30)によると、東森寛頻電信は、2000年1月29日、「2月中旬に長距離と国際電話サービス、4月に市内電話サービスを開始する」と発表した。営業地域は、当初、台北、新竹、高雄など台湾の主要5都市。2000年の売上高は50億台湾ドル(1台湾ドル=約3.4円)を予定している。

◆ 新世紀資通(New Century InfoComm)
 新世紀資通は、携帯電話の遠伝電信(FarEasTone)と和新電訊(KG Telecom)に出資している企業グループが集まって設立されている。中核になっているのは、遠伝電信の筆頭株主でもある遠東グループである。遠伝と和信の2つの携帯電話ネットワークに加えて、和信グループの傘下には、東森と並ぶ大手CATVインターネットの和信超媒体(Gigamedia)もあるので、新世紀資通の強みである。外資では、シンガポール・テレコム(シングテル)が18%出資しており、シングテルとの協力でAPCN2、China-US、Japan-US等の国際海底ケーブルを利用するよう決定している。また遠伝電信に出資しているAT&T Wirelessからも出資の打診を受けており、検討中だという。新世紀資通は電話サービスだけでなく、IP-VPN、固定と携帯電話のバンドル・サービス等、新分野のサービスにも積極的に進出したいとしている。

◆ 台湾固網(Taiwan Fixed Network Telecom)
 台湾固網は台湾第2位の携帯電話事業者である台湾大哥大(Taiwan Cellular)を経営する企業グループが中心となって結成した。筆頭株主は台湾大哥大と同じ、電線メーカーの太平洋電線電纜である。外資ではこれも台湾大哥大と同様、米国GTE(現Verizon)が参加している。

 台湾固網は免許の申請条件であった最低資本額400億台湾ドルをはるかに上回る700億台湾ドルの資金を集め、資金面では最有力である。また台湾の民間携帯電話会社で最大の台湾大哥大の顧客ベースを持つことが固定通信の分野でも有利に働くと期待されている。

■中華電信の民営化

 中華電信は、長く国内、国際、携帯電話サービスを独占的に提供してきた。1997年の移動体通信の競争導入以来、携帯電話加入者数は飛躍的に増加して、台湾でも、2000年2月に携帯電話の加入者数が固定電話の加入者数を上回った。一方、携帯電話市場における中華電信のシェアは、最近では3割近くまで落ち込んでいる。さらに現在、中華電信の収入の柱となっている固定電話の分野でも独占が終わることとなり、台湾政府は本格的な競争が始まる2001年半ばまでに中華電信の民営化プランを完遂したい考えで、2000年8月、第1次株主放出が実施された。2000年には第2次放出により更なる株式の売却が予定されている。

 中華電信はISPのHinetを運営しており、1999年からADSLを提供している。台湾では約140のISP免許が発給されているが、中華電信が2000年11月末に発表したところによると、Hinetの利用者は約200万、第2位のSeednetが約50万と言われているので、Hinetの圧倒的な独占力が分かる。(KDD総研R&A 2000.12月号)

図表3
<寄稿> 武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp
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