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ハイパーアジア
2001年6月掲載

中国、携帯加入者急増に備え、通信網を拡充

 中国の携帯電話加入者は、2000年の1年間でほぼ倍増、2001年に入ってからも、わずか3ヶ月間で約1,500万が新たに加入し、ついに1億人を突破した。さらなる新規加入者の獲得と、多様化する顧客ニーズに対応するため、携帯電話事業者は相次いで通信網の拡充を図っている。日経新聞(2001.5.22)の記事を中心に、急拡大する中国の携帯市場を取上げる。

■携帯電話加入者が1億を突破

 中国信息産業部(情報産業省)が、2001年4月に発表したところによると、2001年1月〜3月の間に、中国の携帯電話加入者は新たに1,504万8,000人増えて、ついに1億人の大台に達し、1億30万人となった。中国移動の加入者は7,581万7,000人(シェア:75.6%)、中国聯合通信が2,449万7,000人(シェア:24.4%)となっている。2000年の1年間でも4,179万増えているが、2001年に入っても、そのペースはまだ衰えを見せていない。

 人口100人当たりの携帯電話加入者数で示す携帯電話普及率は、全国で見れば7.7%で、2000年末より1%増加したが、中国東部が12.5%に対して、中部は4.5%、西部は3.9%で、地域間格差が依然目立っている。また普及率の高い上位5省市は、北京市(27.7%)、上海市(24.5%)、広東省(18.4%)、浙江省(15.2%)、福建省(13.3%)の順だった。

図表1:中国の携帯電話加入者数(中国信息産業部)

日経 2001.5.22)

 信息産業部によると、中国の携帯電話市場は他の通信分野に比べても、抜きん出た成長を続けている。2001年1月からの四半期の売上高は339億5,000万元(約5,100億円)で、前年同期の43.9%増であり、携帯電話サービスの売上高が通信市場全体の売上高の5割近くを占めるまでになっている。携帯電話の普及の一方で、ページングの利用者は減少に転じ、同期間中に利用者は251万8,000人減少して、4,612万3,000人になった。固定電話の新規加入者は、今年に入り1,054万4,000人増えて、2001年3月末の総加入者は1億5,500万となっている。

■携帯インフラの拡充

 中国の携帯電話事業者が新規加入者の獲得を狙って、通信ネットワークを相次いで拡充する。最大手の中国移動は、既存の携帯電話に比べて、約2倍の速度で電子メールなどを配信できる新サービスを2001年内にも導入する。中国聯合通信は、約1,500万人の新規加入者が利用可能な通信網を新たに構築する。

中国の携帯電話市場は加入者が急拡大する一方、顧客ニーズも多様化しており、事業者はサービス面での競争を迫られている。(日経新聞 2001.5.22)

 中国移動が導入するのは汎用パケット無線システム(GPRS)と呼ばれるインターネット接続サービスで、電子メールや音楽・ゲーム配信、データ検索などができる。2001年内のサービス開始を目指している。既存の音声サービスを中心とする利用者の増加に対応する拡張工事分を含めて、米モトローラに1億4,600万ドルの設備を発注している。

 中国聯合通信は、米クアルコムが開発したCDMA方式による携帯電話サービスを本格的に普及させるため、全国12の省で通信網を整備する。2002年初めまでに約1,500万人が利用できるようにする計画で、米ルーセント・テクノロジーズやモトローラ、スウェーデンのエリクソンのほか、大唐電信、中興通訊など、国内外の通信機器メーカー10社との間で購入契約を結んだ。契約額は合計で121億元(約1,800億円)。

 KDD総研R&A(2001年5月号)によれば、中国では、WAPによるモバイル・インターネット情報サービスよりも、ショート・メッセージ・サービス(SMS)の人気が高い。SMSはWAPよりも早く、1999年5月からサービスが始まっていたが、あまり宣伝されず、それほど利用されていなかった。しかしWAPや次世代携帯電話等のニュースで、携帯電話による音声以外のサービスが注目され始め、また料金が改定されて、手頃に利用できるようになったことなどから、中国移動によると、2000年第4四半期以来、SMSの取扱量は毎月数千万通の勢いで増加していると言う。

 SMSはインターネットとは異なり、同じ事業者のネットワーク内に閉じたサービスで、文字数もアルファベット160文字(漢字は70文字)までという制限があるが、メールの他に簡単なイラストを使ったグリーティングカードや、ニュース・天気予報等の情報サービス、さらに着信メロディのダウンロード等のサービスがSMSでも楽しめるようになっている。

 上海のコンテンツ事業者Linktoneは中国移動の加入者向けにSMSやWAPをベースにした各種の情報サービスを提供している。料金は天気予報・ニュース・占い等が月額2〜5元(約30〜75円)、アイコン・イラストのダウンロードが1件0.5元(約8円)、着メロが1曲1元(約15円)などとなっているが、その料金は、中国移動が、通話料と一緒に代理徴収する「Monternet」(MobileとInternetを掛合せた造語)というiモードと同じビジネス・モデルで回収しており、現在、上海の他、北京、広東省の3都市で提供されている。(「中国携帯電話ユーザーが1億人突破」KDD総研R&A 2001年5月号)

■次世代携帯電話の規格検討

 中国政府は現在、2002年以降に導入する次世代携帯電話サービスで、3つの技術規格の採用を検討している。

 中国移動は、現在GSM方式を採用しているため、次世代でも欧州方式を踏襲し、W-CDMAに移行するとの見方が有力だ。一方、中国聯合通信は今回構築する通信網を基盤に、次世代でcdma2000を採用し、中国移動との違いを鮮明に打ち出したい意向だ。

 急成長を続けてきた世界の携帯電話市場が踊り場を迎える中、中国はその勢いがおさまらず、「年内には米国と肩を並べる世界最大の市場になる」(ノキア)との予想も出ている。

 日経(2001.5.22)は、中国政府は、次世代サービスの導入前に、中国移動と中国聯合通信の複占体制を改め、新規参入を認める公算が大きい。通信業界では、固定電話最大手の中国電信や新電電の中国網絡通信、吉通通信など、いずれも全国規模で通信サービスを提供している事業者の名前が候補として挙がっている。

 次世代では、「中国独自のTD-SCDMAを含め、3つの方式が加入者獲得を競い合う図式になる」との見方が強まっている。すでに英ボーダフォンと中国移動は戦略提携を結んでいる(「中国移動に、英ボーダフォン出資」Hyper Asia 2000年10月号参照)が、中国市場参入を狙う日米欧の他の通信事業者の対中戦略も今後本格化しそうだ。

図表2:中国が検討している次世代携帯電話の通信方式

採用する通信事業者
主な技術開発企業
日米欧 中国
W-CDMA
(日欧方式)
NTTドコモ、英ボーダフォン等 未定 エリクソン、NEC等
Cdma2000
(米国方式)
KDDI、米ベライゾン・ワイヤレス等 中国聯合通信(計画) 米クアルコム
TD-SCDMA
(中国方式)
未定 未定 独シーメンス、大唐電信等
(日経 2001.5.22)
<寄稿> 武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp
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