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2001年8月掲載 |
アジア通信市場の現状と外資の投資状況(1) 年内にも実現する中国のWTO加盟で、巨大市場・中国への注目が高まる一方、東南アジアへの外国キャリアの投資は、伸び悩んでいるように思われる。アジアの通信市場の自由化と外国資本による投資の状況を2回に分けてレポートする。今回は、アジアの通信市場規模と外資規制の状況を取上げる。
1.通信市場の規模中国、日本に比べると、東南アジア市場は、1カ国当りの市場規模が比較的小さい。最も基本的な固定電話網の整備が遅れているだけでなく、通信量の拡大ペースも、経済危機以降、鈍化している。資金、技術面で通信インフラ拡充の主軸となってきた先進国の大手通信キャリアは、市場規模が小さく、将来の成長性に対する期待感も低下している東南アジアの優先順位を下げて、日本や中国に投資対象を絞り込む戦略に転換する動きが見られる(日本経済2001.7.2)。 (1) 固定電話加入数 国際電気通信連合(ITU)では、固定電話の普及率と1人当りGDPとの間に相関関係があることを示し、国の経済が発展すれば、電話普及率も向上するとしている(『電気通信と経済開発』東洋経済新報社、1985年、図表1)。今後、経済水準の上昇に伴って電話回線の普及が進むことが予想される。95年の普及率を見ると、マレーシアが16.7%、タイ6.3%、中国3.3%、フィリピン2.1%であった。中国は、過去5年間に、加入数が年平均で1600万増加しており、99年の普及率は8.6%であるが、回線数では1億872万回線と、米国に次いで世界第2位となっている。中国では、所得の伸びを超えるスピードで、固定電話の普及率を上げている。 図表1:アジア各国・地域の1人当りGDPと固定電話の普及率
TeleGeography 2001より作成
(2) 携帯電話加入数
固定電話の加入数の増加をはるかに超える勢いで増えているのが、携帯電話である(図表2-1、2-2)。固定電話の普及率が40%を超えているシンガポール、香港、日本、韓国でも携帯電話の加入数は伸びている。1999年末時点で、香港と韓国では、携帯電話の加入者数が固定電話の加入者数を超えており、日本でも、2000年3月末の加入数では、固定電話(5,545万)を携帯電話(5,685万、PHS含む)が上回った。 図表2-1:携帯電話と固定電話の加入数の推移(1995〜99年) 図表2-2:携帯電話と固定電話の加入数の推移(1995〜99年)
TeleGeography 各号より作成
(3) 国際通信トラヒック
国際通信の発信トラヒックも、国定電話の普及率と同様に、1人当りのGDPが高い国ほど、発信トラヒック量が多い傾向が見られる。図表3に示すように、国際通信の発信トラヒックは、1997年までは、各国とも順調に増加していたが、97年から98年にかけて伸びにブレーキがかかった国がある。 香港は99年1月に国際単純再販売(ISR:International Simple Resale)が解禁になり、対前年比で44.7%と急激な伸びを記録している。99年に対前年比2桁の伸びを記録したのは、香港以外に、中国(13.9%増)、台湾(10.1%増)であるが、一方、インドネシア(16.9%減)、フィリピン(16.8%減)、韓国(1.1%減)は減少に転じている。 図表3:国際通信トラヒック(発信)の推移
TeleGeography 1997/98、2001より作成
2.外資規制の緩和1997年2月に合意した世界貿易機関(WTO)の基本電気通信交渉の自由化約束で、日本はNTT、KDDを除く、すべての外資規制を撤廃した(98年7月、KDDの外資規制は撤廃)。その直後の3月、外資系キャリアとして初めて米ワールドコムが第一種電気通信事業者免許を取得後、2001年7月末までに第一種免許を取得した外資系キャリアは31社に上っている。国内の既存キャリアに対する出資も積極的で、1999年4月、AT&TとBTが、日本テレコムに合計30%の出資を決めた1ほか、同年6月、英ケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)がTOBにより、IDCを買収2している。
日本、シンガポール、台湾では、新規参入キャリアに対する外国資本による出資比率の上限は設定されてないが、既存キャリアについては、NTT(日本)、中華電信(台湾)とも外資の上限は20%である。シンガポールでは外資規制は撤廃されているが、シンガポール・テレコム株式の78%を依然、政府が保有している。 シンガポールは、WTOの自由化約束では、シンガポール・テレコムと競争する事業者に免許を付与し、2000年4月から複占体制を開始、その後、2002年4月に完全自由化するとしていた。基本電気通信免許には3つのコンソーシアムが応札し、1998年4月、NTTとBT連合であるスターハブが免許を落札した。シンガポール政府は2000年1月、スターハブのサービス開始を目前にして、完全自由化を2年前倒しして2000年4月とすると発表。直接投資は上限が49%(間接も含めて73%)であった外資規制も撤廃された。 香港では、香港テレコムが域内・域外(国際)通信とも独占的に提供していたが、95年に、ハチソンコミュニケーションズ、ニューT&T、ニューワールドテレホンの3社に域内の固定通信網(FTNS、Fixed Telephone Network Service)の免許が付与され、さらに追加免許を出すかどうかを98年に検討するとしていた。香港特別行政区政府は、99年5月、域内のFTNS免許の新規発行は2003年1月まで行わない方針を明らかにした。国際通信サービスについては、98年1月、香港テレコムが2006年まで認められている国際通信の独占的運営免許の早期終了に合意。99年1月から国際単純再販売(ISR)が解禁され、2000年1月からは、既存のFTNS事業者に対して、域外の設備ベースの参入が認められた。すべての免許について外資規制はない。 その他のアジアの国では、外資を認めない中国を含め、外国資本による過半数の株式取得は認められていない。また既存キャリアの外資上限を低く、新規参入キャリアには比較的高い割合まで出資が可能である。 タイは、WTOに対して、2006年の外資規制完全撤廃を約束しているが、「いかにも悠長」(米系通信キャリア幹部)との不満が多い(日本経済2001.7.2)。マレーシアは、1998年に外資上限を49%から61%に引上げた(テレコム・マレーシアについては30%維持)が、通貨危機で経営が悪化した新規参入キャリアのテコ入れが目的で、5年間の期限付きである。 台湾では、設備ベースの通信キャリアへの外国企業の出資上限を、20%としていたが、1999年11月の「修正電信法」第12条により総合固定網事業者(第一類事業者)の外資上限を60%(直接投資20%+間接投資40%)へ緩和した(中華電信については20%を維持)。
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<寄稿> 武川 恵美 編集室宛 nl@icr.co.jp |
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