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2002年2月掲載 |
中国の通信業界、大掛かりな再々編へ2001年12月11日、中国は、ついに世界貿易機関(WTO)加盟を果たした。その同日、通信最大手である中国電信を南北2つの地域会社に分割することを決定した。中国電信は2000年に固定・携帯・衛星通信の会社に分割されたばかりである。中国政府の大胆な業界再編の狙いを考察する。 ■中国電信の南北分割中国電信の再分割については、2001年春頃から様々な憶測や噂が先行していた(日中ビジネスニュース2001.4.19等)。11月下旬になり、呉基伝・信息産業部長が、南北分割の方向で話が進んでいることを公けにした(KDD総研R&A 2002年1月号)。そして2001年12月11日、「国務院が中国電信の南北分割を批准(採択)」を発表した(www.mii.gov.cn/Mii/homepage.nsf/documentview、2001-12-11の文書参照(中国語のみ))。 それによると、現在の中国電信を南北の地域会社に分割する(図表1参照)。分割後の北部会社には華北地区(北京市、天津市、河北省、山西省、内蒙古自治区)、東北地区(遼寧省、吉林省、黒龍江省)に、河南省と山東省の10省・自治区・直轄市が属し、残りは南部会社に属する。南北各社はそれぞれの営業地域内の市内網を引継ぐほか、全国をカバーする長距離伝送路については、30%を北部会社が、70%を南部会社がそれぞれ受継ぐ。分割後も相互に回線を接続。カバーエリアは限定せずに、相互乗り入れを可能としている。北部会社は、さらに、データ通信を行っている吉通通信(吉通)および中国網絡通信(網通)と合併、「中国網絡通信集団公司」に名称を変更する。南部会社は従来の名前である「中国電信集団公司」を承継する。 今回、分割の方針は確定したが、要員・資産の分配、役員人事等の具体的な作業はこれからである。中国電信の年間売上高は約1,700億元(約2兆5,000億円)、国内の固定電話1億4,000万回線をほぼ独占している。従業員数は50万人に達する。分割や合併の時期は明らかでなく、各社の準備の度合いなどを見ながら実施していく構えと見られる(日経2001.12.12)。 ■中国電信は2度目の再編 図表2に示すように、中国政府は1994年、郵電部傘下で、電気通信事業の運営部門であった「電信総局」を分離し、企業体として独立させた。95年には「中国郵電電信総局(中国電信、China Telecom)」が正式名称として登録されている。98年4月、郵電部、電子工業部、電力工業部を基礎として「情報産業部(信息産業部、Ministry of Information and Industry)」が設立された。さらに2000年4月には、中国電信を固定電話と携帯電話の2社に分割し、現在の「中国電信」と「中国移動通信」が発足した。分割後、2社は情報産業部傘下から、中央政府の直轄企業となっている。8ヶ月後の12月には、中国電信から中国衛星通信が分離し、中国電信の第1次分割*が完了した。 中国電信の再編を進める一方、中国政府は、中国聯合通信(China Unicom、聯通)の設立を認め、中国電信の独占体制に風穴を開けた。聯通は、94年7月、電子工業部、電力工業部、鉄道部と、13の国有企業等が出資して誕生した。聯通は、携帯電話事業を95年7月に北京、上海、天津で開始した後、12省市(2001年3月時点)で展開している。聯通の参入後も、中国電信は巨大な通信基盤とブランド力を維持し、実質的な競争状態にはなっていなかった。2000年4月の中国電信の第1次分割により、固定事業と携帯事業が分離されたことで、中国移動通信と聯通の競争条件がほぼ同じになった。その結果、99年末には14.2%だった聯通のシェアは2000年末に22.7%に上昇し、その後も着々とシェアを伸ばしている。 北部会社と合併する吉通は、インターネットとデータ通信を提供する事業者である。94年1月、電子工業部を中心に、25の国有企業、研究機関が出資して設立された。吉通は、ここ数年、最大手の中国電信と新興勢力の網絡にはさまれて伸び悩んでおり、ブロードバンド通信やデータセンタ等の大型の投資資金が不足していた。吉通にとって、今回の合併は生き残りの道となりそうである。2001年11月には、吉通は中国移動と合併する案もあった(日経2001.11.5)。 一方、中国網絡通信(China Netcom、網絡)は、99年、中国初の本格的なブロードバンド事業者として、鉄道部、上海市政府、広播電影電視総局(ラジオ映画テレビ総局)、中国科学院が均等出資して設立された。2000年に17の主要都市を結ぶ高速・光ネットワーク「CNCnet」を開通させ、2002年3月末までに47都市に拡大する予定である。網絡は、他の通信事業者に回線の卸売を行う「キャリアズ・キャリア」、データセンター、IP電話サービスを3大業務としている。卸売顧客には中国移動、吉通、科研網(CSTNET)、教育網(CERNET)、世紀互聯(21ViaNet)等が含まれているという。また北京、上海、広州、シンセン、大連の5都市で広域LANによるブロードバンド・インターネット接続サービスを提供している(KDD総研R&A、2001年10月号)。中国電信にとっては、市場開放で外資が参入する前に、網通の先進的な技術とブロードバンド資産を取り込み、外国の事業者にも対抗できるよう、体質強化が期待できる。 鉄道通信信息責任公司(China Railcom)は2000年12月、鉄道部傘下の通信事業者として設立された。全国の鉄道通信網の設備、指揮管理権を鉄道部から譲り受け、2001年3月1日から正式に運営を開始している。中国衛星通信は、中国電信の第1次分割により独立。旧・中国電信の衛星通信サービスのほかに、中国郵電翻訳服務、中国電信(香港)チャイナサット、中国東方通信衛星等の衛星通信サービスに携わる企業を統合し、2001年12月に正式に営業を開始した。(日経産業2001.1.9) 中国電信の第2次分割により、中国の通信市場は、新・中国電信、新・網通、中国聯合通信(聯通)、中国移動通信、中国鉄道通信(鉄通)の5社に、中国衛星通信を加えた体制になる
■再編後の動き再編後の南部会社は、再分割案のために中断していた海外上場計画を再開し、早ければ2003年第2四半期中に実施予定といわれている。南部会社は、中国通信市場の最先端を行く広州、上海を継承する反面、開発の遅れた西部の省区を多く抱えることになる。今後の発展のためには、海外上場や、外資との提携等の資金力強化のほか、ユニバーサルサービスの整備といった制度的なバックアップが必要になると考えられる。(KDD総研R&A、2002年1月号) 今後、中国移動通信や、聯通などを巻き込んで、さらに再編を進めるとの見方がある。最終的には、現在7社ある大手通信事業者を3〜5社に集約し、それぞれの通信会社に、固定と携帯、データ通信など、それぞれのサービスの機能を持たせ、各社を競合させるとの構想があると見られている。(日経2001.12.12) しかし、これまで有効な競争が生まれていないことを考えると、地域分割だけでは競争につながらないだろう。政府が通信業界の大掛かりな再編を目指すのは、WTO加盟に際して約束した通信市場の対外開放で、国有通信大手の経営強化を急ぐ必要があると判断が働いたからだと思われる。外資への開放は、段階的に認められる。携帯電話の場合、まず上海など3都市に限って営業を認め、外資の出資比率も25%まで認める。加盟から3年以内に出資比率の上限は49%まで緩和し、5年以内に地域制限を撤廃する。固定電話やデータ通信など、その他のサービスも、出資比率の上限なども残しながら、外資に門戸を開く見通しである。 |
<寄稿> 武川 恵美 編集室宛 nl@icr.co.jp |
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