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ハイパーアジア
2002年6月掲載

韓国KT、完全民営化へ

 ワールドカップの最中ということもあり、先月号に続き、韓国の話題を。

■最大株主にSKテレコム

 韓国の情報通信省は、2002年5月21日、民営化を進めるKT(旧韓国通信)の政府保有株式28.37%の公募を締め切った。この結果、SKテレコムが他社株転換債(EB)を含めて11.34%分を取得して最大株主になった。

 KTは韓国の市内・市外電話網の9割以上、国際電話も6割のシェアを持つ、電気通信の総合キャリアである。1987年から15年かけた民営化事業は今回の政府保有株売却により完了する。政府は2002年6月末までに全株式の売却作業を終了。7月に開く臨時株主総会で民間企業になるための定款変更を承認する予定である。

表1:KTの会社概要
(日経産業新聞2002.5.22)
  • 総資産:22兆8,000億ウォン(韓国6位)
  • 売上高:11兆5,000億ウォン(2001年12月期)
  • 純利益:1兆872億ウォン(同)
  • 資本金:11兆7,000億ウォン
  • 従業員数:4万3,000人
  • ADSL加入者数:416万2,000人(シェア50%)
  • 関連企業:11社

 今回、政府が放出した28.37%のうち、企業割当分は15%(EB含む)。これをSKとLG電子(2.27%)、大林産業(1.39%)の3社が取得した。売却額は1株当たり5万4,000ウォン(約5,400円)。SKの総投資額は1兆9,416ウォン(約1,940億円)だった。移動体通信の影響などを判断して株式取得を決めたとみられる。

■サムスンは株式取得失敗

 日経産業新聞(2002.5.22)によると、韓国政府は株式放出に当たり「サムスン、LG、SKが均等に株式を持ち合って欲しかった」(情報通信部)としている。政府は当初から特定企業の傘下にならず、経営陣を監視できるシステムを作りたいと考えていた。そのため、公募の仕組みは極めて複雑なものになった。株式5%分の申請を募り、優先分配権を得た企業だけが、持分比率の2倍を限度に株式やEBの形で追加取得できる。

 サムスングループには「サムスン電子をKTの株主にして、通信サービス参入への足場を作りたい」との思惑があった。KTは携帯端末の納入先でもあり、株主の立場はぜひ確保したかったのだ。

 しかし通信分野でのサムスン電子の「突出」には他社の警戒感は予想以上に強かった。サムスン電子は本体での出資を断念し、優先配分権を持たないサムスン生命などグループ2社が申請して、批判をかわしつつ、実を取る作戦をとろうとした。

 それが予期せぬSKの参入で様相が一変した。SKテレコムがKT株取得を申請したのは、締切り時間ぎりぎりだった。結局、各企業の申請合計が上限とした5%を超え、優先権を持たないサムスンは1株も確保できなかった。LGの配分も減り、社外取締役を推薦できる3%分を取得する事ができなかった。

■SKテレコムのジレンマ

 事前の政府による参加打診にSKテレコムは一貫して慎重な態度だったという。SKはKT系移動通信会社のKTフリーテルと競合関係にあり、KTに食指を伸ばせば、サムスンと同じく「突出」批判を受けかねない。逆にサムスンに取られれば、大きな脅威となるためだ。

 今回、筆頭株主となったSKにも懸念はある。株式取得による投資総額は約2,000億円で、最大株主になったが経営権を握ったわけではない。SKテレコム株は公募締切りの21日、続落した。今回の投資負担が本業の設備投資に影響するのではないかという市場の不安感の表れだ。

■所感

 韓国の電気通信に関する新聞記事は、他のアジア諸国の記事と比べて、数が多い。韓国のブロードバンドの普及と、それに伴い、IT企業が台頭しているためである。ただ今回の出来事は、日頃からアジアの電気通信をウォッチしている筆者も、少々驚いた。旧韓国通信の徹底した民営化を進めようとする韓国政府の気合いのようなものを感じる。

<寄稿> 武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp
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