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2002年7月掲載 |
世界のブロードバンド市場をアジアが牽引
アジア開発銀行(ADB)は、「Asian Development Outlook 2002」において「アジア経済は底硬い回復基調」と記している。ADBは、2001年には3.7%だったアジア太平洋地域の経済成長率は、2002年は4.8%、2003年は5.8%に上昇すると予測する。「Outlook 2002」は、「インターネットが経済成長を牽引する役割を果たしている」としている。今回のHyper AsiaはPoint Topic社(英国)が2002年4月に発表した「DSL Worldwide Directory, Edition 5」を元に、アジアにおけるDSLの普及状況をまとめる。
*「DSL Worldwide Directory, Edition 5」は、2002年1月時点の、世界のDSLサービスを包括的に把握することを目的に作成されている。カバーしている地域は50カ国、97事業者。本稿では、アジア地域のトピックスを中心に扱う。 ■DSL開始時期DSLの開始時期は図表1のとおりだが、2001年に、中国およびインドがDSLを開始したことは意義深い。特に中国の潜在的な成長力は大きい。現在、中国電信は北京および上海でサービスを開始しており、主要都市にDSLAMの設置を始めている。 シンガポールは1997年から、香港は1998年から、DSLを、ビデオ・オン・デマインドや高速情報アクセスに採用しており、カバー率も広い。各国によりカバー率の報告の方法は異なるが、1999年9月時点で、香港はネットワークの80%、シンガポールは2000年第1四半期に、全国でDSLが利用可能となっている。韓国通信は1999年にDSLを開始したが、2001年半ばで90%以上、ハナロ通信(韓国)は290万世帯で利用できる。 1999年8月に台湾は、全都市でDSLが利用可能となっている。台湾や韓国の事業者は機器サプライヤーとアグレッシブな交渉を続けており、ネットワーク建設コストを引下げている。中華電信(Chunghwa Telecom)は、126万加入に対して、1ポート=170ドルで、2001年3月に交渉を締結している。韓国通信は60万回線につき、1ポート=125ドルである。 図表1:DSL開始時期
■DSL加入数・普及率Point Topic社の調査によると、世界のDSL加入数は2001年末に1,880万に達した(図表2)。同社は2000年末の加入数を650万としており、1年間の増加率は190%である。アジア太平洋の加入数は、2001年第2四半期に北米市場を超え、世界最大の市場規模を誇っている。国・地域単位で見た場合、韓国の加入数は500万加入以上で、世界第1位の市場である。台湾は、2001年の1年間で570%増の急成長を続けており、DSL加入数は2001年末に100万を超えた。 図表2:アジア・太平洋の国・地域別DSL加入数
Point TopicはDSL加入数を企業用と住宅用に分計して報告している(事業者から入手した情報および同社による推計)。結果としては、ブロードバンド市場が成熟しておらず、DSLの価格が高い国・地域ほど、企業用回線の割合が多くなっている。 世界的に見れば、住宅用回線数が企業用の約5倍である。韓国、台湾やドイツ、カナダは、住宅市場向けにバルクでサービスを販売しており、加入数の8〜10倍となっている。 人口100人当りのDSL回線数は、図表3に示すように、2002年1月、韓国が世界1位で10.95%、香港は5.56%、台湾は4.83%と、上位3位までをアジアの国・地域が占める(日本は13位)。この結果について、報告書は、上位の国は、1998年や99年といった早期にDSLを導入しており、ブロードバンド事業者が全国規模で競争し、低価格でDSLを提供している市場であると指摘する。また、サービス提供を行う「バックオフィス」の充実を図り、申込みから開通までの期間短縮を図っているなどの努力を続けている。
図表3:DSL普及率トップ10 (Point Topics資料を元に作成) |
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<寄稿> 武川 恵美 編集室宛 nl@icr.co.jp |
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