テレコム・マレーシア、
　　携帯電話事業部門をセレコムに売却

　マレーシアの大手通信事業者のテレコム・マレーシア（TM）と、携帯電話事業者セレコムは10月28日、TMセルラーの株式をセレコムに売却することで合意した。セルコムがTMセルラーを買収したことで、セルコムはマレーシア最大の携帯電話事業者になる。

■売却合意にいたるまでの経緯

　マレーシアの携帯電話事業は、首位のマキシス（Maxis）を始め、セルコム（Celcom）、TMセルラー・グループ、タイムセル、DiGi*の5社がサービスを行っており、人口2,400万の市場には事業者数が多すぎるとの批判があった。通信事業の再編を求める政府に対して、2002年3月には、セルコムとDiGiが第3世代携帯電話の免許取得に向けた提携を発表したが、2ヶ月の5月に合意を解消した。これはセルコムの親会社であるTRIの財務が悪化救済のため、TMがTRIの筆頭株主になったことが原因である。
*DiGiは2001年末の加入者数で4位だったが、2002年6月には5位に。

　TRIの会長であるTajudin Ramli氏は、個人的借金の不履行により、政府系の不良債権管理・買取機構にTRI株式（約13％）を差し押さえられた。これを、2002年4月末、TMが取得。TMはTRIの関連会社が保有する株式やその後、買い増した分を合わせて、5月末時点で31.25％を所有するにいたり、事実上セルコムを傘下におさめた。

　2002年8月、マレーシアの無線周波数割当を管理する通信マルチメディア委員会は、第3世代携帯電話サービス（2003年開始予定）の免許を、マキシスとTMに与えると発表した。当初3つとしていた免許数を2つになっている。携帯電話事業者5社のうち4社と、新規参入を狙う1社の計5社が免許を申請していたが、政府は人口規模等を勘案して免許枠を減らしたとみられる。

■売却のメリット

　TMは、TMセルラーの株式を16億8,400万RM（1RM＝約32円）でセルコムに売却する。TMはセルコムに自社の関連会社を売却したことで、セルコムに対する出資比率がこれまでの31.2％から47.9％へと上昇する。一方、セルコムはTMセルラーの加入者を引き継ぐので、加入者数が300万以上、市場シェア約40％に急成長する。

　TMは、今回の売却について、「マレーシア政府からの通信業界統合化要請に呼応して決断した」と背景を語り、「（売却することで）携帯電話業界がより効率化され、結果的に顧客にとって多くのメリットがもたらされるだろう」と期待を寄せている。GSM900方式を採用しているセルコムは、マレーシアの広い範囲をカバーし、一方、GSM1800方式のTMセルラーは都市部をカバーするなど、両社ともに双方のプラットフォームを補完し合えるというメリットもある。