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ハイパーアジア
2003年6月掲載

アジアのモバイル・コマース

 モバイル・コマースとは、インターネットへの接続機能を持つ携帯電話や携帯情報端末などを通じて商品・サービスの販売、予約受付けを行う取引形態である。日本では、auが携帯電話を使って店頭でクレジットカード支払ができるサービスのトライアルを行っている。NTTドコモは、2003年5月、電子モールでの買い物の決済に携帯電話で代行するサービスを開始した。アジアでも携帯電話の普及率は急速に高まっており、モバイル・コマースの大きな成長が見込まれている。シンガポールと韓国のモバイル・コマースの取組みを取り上げる。

■シンガポール

 シンガポールでは、加入する携帯電話事業者を問わず、同様のモバイル・コマース利用を目的として、2001年からトライアルが行われ、2003年3月に完了した。政府情報通信開発庁(IDA)の呼びかけで国内外の37社が5つの企業連合を組成、駐車場の料金の支払い、チケット購入などの5つの実験が実施された。

 国内の3銀行が出資するデビットカード会社とシンガポール・テレコムなど携帯事業者3社らの企業連合「YW8」には、空港の駐車場運営会社や映画館などの業者が参加し、利用者が希望のサービスを携帯メッセージで指定すると情報が業者と銀行に送信され、クレジットカードや口座引き落としで決済が完了する。3月には商用化の予定である。

 他の企業連合は非接触式チップを埋め込んだ形態電話を使い、店頭でのキャッシュレス支払いを可能にするサービスや、銀行に電話してチケット予約の支払いを済ませるサービスなどを提供する予定で、それぞれ2003年後半に開始する。

 IDAによれば、「先進国では個々の通信事業者や銀行主導の決済サービスが多い。消費者の利便性のためには『どの携帯通信会社に登録していても偏りなく受けられるサービスが理想』」と考えており、企業連合型を推進した。合計2,000万シンガポールドル(約13億4,000万円)の実験費用のうち、IDAが約800万シンガポールドルを拠出した。

■韓国

すでに本格的な取組みが始まっているのが韓国である。モバイル・コマースの世界的な普及には、韓国というホットな通信市場でモバイル・コマースが成功するかどうかが鍵を握ると見られている(岸田、情報通信総合研究所、2003年)。

 韓国の携帯電話市場で約半数のシェアをもつSKテレコムは、モバイル・コマース・サービス「モネタ」の積極的な導入を進めている。赤外線を使った技術方式を採用し、店頭のPOS端末での支払いが携帯電話でできる。同社は、ジェオンブク銀行のクレジットカード事業を買収し、クレジットカード機能を携帯電話サービスに取り込むべく動いている。またビザ・インターナショナルの協力を得て、さらに第3位携帯電話事業者のLGテレコムともこの分野で提携した。

 一方、ライバルである第2位の事業者のKTFも、同様のサービス開発を進めた。こちらは非接触型ICカードによる方式を採用し、マスターカードがサポートについた。このように韓国では携帯電話事業者を軸とし、クレジットカード業界がそれに絡むという構図である。

<寄稿> 武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp
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