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情報通信の新潮流
2002年9月掲載

第2回

日本のIT革命推進の取組み
〜官民協調で需要創出活発に〜


通信事業研究グループ
エグゼクティブリサーチャー
堀 伸樹 hori@icr.co.jp

■着々進む5重点施策

 韓国の「サイバーコリア21」(1999年)、シンガポールの「シンガポールワン」(1996年)及び「インフォコム21」(2001年)、欧州連合(EU)の欧州規模の「eヨーロッパ」計画(2000年)などのIT戦略に関する海外諸国の相次ぐ動きに触発されて、日本政府も遅ればせながら、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法−2001年1月施行)」を成立させた。

 それに基づいて政府に設置されたIT戦略本部は、「2005年(平成17年)に世界最先端のIT国家」となり「すべての国民がITのメリットを享受できる社会」を実現するために「e-Japan戦略」を同3月に制定し、ブロードバンド・インフラの全国的構築(ブロードバンド普及を促進するための一層の規制緩和を含む)、学校の情報化と国民全体のITリテラシーの向上、電子商取引(eコマース)の促進、電子政府による行政の情報化、高度情報通信ネットワークの安全性と信頼性の確保の5つの重点政策分野を掲げて、それらを実現するための具体的な施策への取組みに着手した。

 インターネット利用環境の整備の目標は、2005年までにすべての国民が常時接続により、高速:3,000万世帯、超高速(30-100Mbps):1,000万世帯に低廉な料金による利用を可能にすることである。

 これらの目標は既に高速:3,400万世帯、超高速:1,400万世帯の利用が可能となっており、目標は達成されている。(実際の加入数は高速:380万加入、超高速:3万加入)
 また、学校の情報化では、公立学校のインターネット接続率は100%と目標を達成した。(米国では1999年頃達成し、現在すべての教室のネット接続を推進中である。)

 行政分野の情報化では、国・地方の行政手続き全般についてオンラインを可能とするための法案が国会に提出され、公共事業の電子入札も開始された。

 電話加入回線の光ファイバー化率(電話局からの大束の回線を加入者宅近くで配線として分岐するポイントまで)は約59%まで整備ずみとなっている。

 以上はIT戦略本部が本年6月に公表した「e-Japan重点計画2002」によるものであるが、さらに318の重点施策について担当官庁と実施期限を明示して推進をはかっている。

■欧州でも同様の動き

 このように分野ごとに目標を設定して進捗状況をチェックしていく動きは、海外諸国でも行われており、すべての欧州市民のための情報社会を実現することを目標とする「eヨーロッパ2005」では、2005年の政策ターゲットとして、すべての公共機関、学校、医療機関をブロードバンドで接続し、だれでもアクセス可能な公共サービスを複数のブロードバンド・プラットフォームで提供することを掲げて、EU加盟15ヶ国にその実現を要請している。

 ともあれ、日本政府は90年代の「失われた10年」で低迷した経済を、ITブロードバンド革命による構造改革と需要創出によって活性化させることを目標として官民協調のもとで推進しつつある。

e-Japan戦略の5つの重点政策分野

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2002年9月18日掲載

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