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2002年9月掲載 |
第9回
電子申請
|
![]() 社会公共システム研究グループ 上席主任研究員 江原 豊 |
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■成果を国民に直接還元e-Japan戦略の重要政策「電子政府の実現」のなかでも、とりわけ急務とされているのが「電子申請」である。IT化の成果を目に見える形で国民に還元することを考えると、国民に対するサービスの接点を電子化する電子申請は、重要な施策となる。民間のサービスではインターネットで予約や決済を済ますことは当たり前である。行政サービスだけ窓口に「出頭」しなければならないというのはもはや許されない。 国では、あらゆる申請・届出等手続きの電子化を2003年度までに実現すべく、必要な基盤整備や制度整備を進めている。ただ、一般国民が国に申請することはほとんどない。重要なのは、地方自治体の電子申請の実現である。現在、電子化に向け準備が進められている身近な手続きとして、表のようなものがある。先に示した2003年度とは、国による必要な環境整備の終了時期であり(関連法案の通過が遅れているため、時期が遅れる可能性がある)、地方自治体の電子申請が実際に本格化するのは、2004・5年度になるものと考えられる。 ■顧客満足とコスト効果目指す電子申請は、実施すれば良いというものではない。問題は、それが国民にとって真にメリットをもたらすかどうかである。 ひとつには、顧客満足度の高いサービスが提供できるかである。そのためには、利用者の声が還元される仕組み作りづくりが必要である。民間のCRM(Customer Relationship Management)のような手法が参考になろう。また、電子申請のメリットは、広く享受されなければならない。障害者や高齢者にも使いやすいサービスを提供することが求められる。 一方、行政サービス向上のためにいくらでもコストをつぎ込んでいいわけではない。電子申請を実施しても従来の窓口を今すぐ廃止することは不可能であるため、業務量やコストの純増につながりかねない。業務の見直し・簡素化、業務システムとの連携、組織の見直し、さらには申請・手続きそのものの廃止等、裏方の業務や組織自体に手を入れることが必須となる。 また、現在の電子申請の議論においては、すべての申請業務を電子化するという志向が強い。しかしよく調べてみると1年に1回あるかどうかというような申請業務も存在する。このような申請業務にまでコストをかけ電子化する政策的意義が果たしてあるのかどうか。各自治体の主体的な判断が期待されるところである。
身近な申請・届出等手続きのオンライン化のスケジュール
日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2002年9月30日掲載 |
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