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情報通信の新潮流
2002年10月掲載

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電子投票−国内事例
〜住民の意識浸透で成功〜


社会公共システム研究グループ
研究員 鹿戸敬介

 本年6月、岡山県新見市で全国初の電子投票が実施された。今回実施された電子投票は、有権者が定められた投票所に出向き、投票用紙に記載する代わりに、銀行のATMのようなタッチパネルの電子機器を用いて投票する方式である。

■結果速く開票作業も短縮

 新見市で行われた電子投票では、開票時間の短縮が大きなメリットとして挙げられる。実際、前回の同様の選挙では開票に約4時間を要したのに対して、今回は約半分の2時間、電子投票分の開票に限っては25分で終了している。有権者はこれまでよりもはるかに早く選挙結果を知ることができ、自治体職員の開票作業時間も短縮することができたのである。また、電子投票によって、これまで生じていた無効票や疑問票は確実に減った。有権者の意思が選挙結果に正確に反映されるとも言える。加えて、身体に障害を持つ人の投票についても、音声や点字によるガイド機能など、従来の自書式投票に比べてバリアフリーの対策が立てやすいという点も大きなメリットと言えよう。

 何事も一番最初に取組むということは、大きな注目を集めると同時に、関係者には並々ならぬプレッシャーがかかるものである。全国初の取組みとは言え、市長および市議会議員の選挙であり失敗が許されるわけではない。新見市では市民への普及啓発策として、選挙の2ヶ月前から電子投票機を用いて摸擬投票を行った。老人クラブのイベント時に実施するなど、特に高齢者を中心に「電子投票は思っているよりも簡単そうだ」という意識を浸透させたことが電子投票の大きな成功要因であると言える。また同時に、選挙事務に携わる職員に対して綿密な研修を行い、当日起こり得るトラブルに対処できる体制をつくりあげたことも大きい。

■「国政」での実施など課題

 現在、広島市や宮城県白石市が電子投票の実施を表明している。国内の有名ベンダーもそれぞれ特徴を持った電子投票システムを開発している。しかし全国的な普及のためには、今後、様々な課題の解決に向けて検討を進める必要がある。たとえば、新見市では、不在者投票(自書式で投票)の開票に2時間を要したことから、全ての投票で電子化を目指すことや、投開票所のオンライン化によって、結果判明までの時間を更に短縮することなどが考えられる。国政選挙でも実施できるようになれば、有権者および選挙に従事する職員にとって極めて有意義であると言える。
 今後、地方選挙で実施していく中で様々な課題を解決しながら、日本の電子投票が進化することを期待して止まない。

実際に体験しての案総

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2002年10月1日掲載

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