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情報通信の新潮流
2002年10月掲載

第12

市町村合併と情報システム統合
〜サービスを停めない体制づくり〜


社会公共システム研究グループ
研究員 松原 徳和

■平成の大合併

 市町村合併が注目されている。平成17年3月までに国全体で、市町村の数を1,000市町村に削減しようという目標が掲げられている。こうした動きを受けて、平成14年7月現在、全国の約8割(2,495)の市町村において合併が検討されており、600を超える協議会や研究会等が立ち上がっている。昨年、東京都西東京市や埼玉県さいたま市が、最近では香川県さぬき市が新しく誕生した。今後の予定としては、静岡県静岡市と清水市の合併が、あと半年以内に迫っている。これから数年は各地で市町村合併のラッシュとなる。

市町村合併の推移

■合併と情報システム

 市町村合併の目的には、地方分権の推進、高齢化への対応、多様化する住民ニーズへの対応、生活圏の広域化への対応、効率性の向上等が挙げられている。一方で、「役場が遠くなって、今までより不便になるのではないか?」、「住民の声が届きにくくなるのではないか?」というようなデメリットも存在する。こうした合併時の住民の不安に対して、総務省のホームページでは「情報通信技術の発展により、近い将来、家に居ながらにしてオンラインで申請などが行えるようになり、空間距離は問題にならない社会」が到来し、「インターネットの持つ双方向性機能を用いた住民参加」が可能になるという理想像が描かれている。今後益々高齢化とそれに伴うデジタルデバイドが予想されている。すべての住民がITの恩恵を受け、合併による行政の構造改革をITでカバーするには、デジタルデバイド解消のための対策を講じることが今以上に必要となろう。

■現場サイドの意見に耳を

 合併を予定する市町村では法定協議会が設立され、合併の基本的事項を決定する。「合併の方式(新設、または編入)」、「合併の期日」、「新市町村の名称」、「新市町村の事務所の位置」は基本4項目と言われている。特に合併の期日については、首長や議会議員の任期が絡むこともあり、各市町村の思惑がぶつかりやすい。4月1日の市町村合併は年度の節目であるため、住民にとっては大変分かりやすいが、市町村業務の面から考えれば、予算上の節目でもあり、また、転勤や入学等、住民が移動する時期である。市町村において一年で最も忙しい時期のひとつである。
 合併に伴なう情報システム統合には失敗が許されないことから、現場サイドから見ると、4月1日は一年のうちで「もっとも避けたい」日のひとつである。

 新しい市町村に移行するにあたって、行政サービスは「一体的に」提供される必要がある。言いかえれば、合併前後にサービスが停止してしまうことが無いように、スムーズに移行する必要がある。合併を通じて、住民サービスの向上が達成されることが理想であるが、情報システム統合のための検討時間を十分に取れないことも多い。その場合限られた時間の中で、市町村合併時にサービスを「停めない」ことに全力が注がれることになる。市町村の業務実態においては、ほとんどの分野においてシステム化が図られつつあり、システム統合にかかる期日を勘案して合併期日を算出するという配慮も今後は必要となろう。

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2002年10月3日掲載

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