ホーム > レポート > 情報通信の新潮流 >
情報通信の新潮流
2003年2月掲載

情報通信の新潮流(第1回)

1996年電気通信法成立から7年間の米国のテレコム業界を検証する(1)

1996年電気通信法が目指したもの

神野(写真)
政策研究グループ
シニアリサーチャー
神野 新 kamino@icr.co.jp

 1996年2月8日、クリントン大統領が電子署名をして、米国の連邦通信法を62年ぶりに大改正する1996年電気通信法(以下、1996年法)が成立した。早いもので既に7年が経過したが、米国のテレコム市場は当時の議会が1996年法に期待した通りの展開を遂げたのであろうか。今日から4回にわたり、過去7年間の米国テレコム業界の動きを検証してみたい。1996年法の最大の目的は「Free-for-all」の言葉に示された通り、テレコム産業のセグメントごとに有形無形に存在した参入規制を撤廃し、「あらゆる事業者」が「あらゆる通信分野」に相互参入し、活発な競争を繰り広げることを目指していた。具体的には、1996年法は州規制当局が州内通信における参入規制を設けることを禁じる一方で、地域ベル電話会社に市内通信市場の開放を条件に、AT&Tからの分割(1984年)以降禁止されていた長距離通信市場への参入の道を開いた。また、ケーブルTV会社と地域電話会社の相互参入規制(クロスオーナーシップ規制)を廃止し、ケーブルTVと地域通信という2つの独占サービス間での競争の促進を図ろうとした。

 すなわち、1996年法の成立により、既存の地域電話会社(その中心は地域ベル電話会社)、大手の長距離通信事業者(AT&T、MCI、スプリント、ワールドコム他)、大手ケーブルTV会社、さらには新興企業も交えた全面競争が開始されると予想されたのである。しかし、7年後の現在、地域ベル電話会社はM&Aにより数が半減し(7社→4社)、MCIを買収したワールドコムは破綻した。また、地域ベル電話会社のUSウエストを買収したクエストを例外として、グローバル・クロッシング、ウィリアムズなどの新興通信事業者も軒並み破綻に追い込まれた。

表:1996年法成立以降の米国テレコム業界再編成の状況

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年2月18日掲載

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。