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2003年2月掲載 |
情報通信の新潮流(第4回)
1996年電気通信法成立から7年間の米国のテレコム業界を検証する(4) 見直しが進む米国のブロードバンド政策 |
政策研究グループ シニアリサーチャー 神野 新 kamino@icr.co.jp |
今日のテレコムの世界において、競争の焦点は音声通信からブロードバンドへと移っている。2月20日には、FCCが1996年法以降最大となる市内競争政策の見直しを決定する予定であるが、その中心はブロードバンド規制である。1996年法はブロードバンド競争が本格的に展開する以前に作成されたため、それに基づくFCC規則も時代遅れの部分が目立つようになってきたのである。 米国のブロードバンド競争について検証する際に、モード間競争とモード内競争という言葉がよく使われる。モードとはある技術のことを指しており、モード内競争とは、例えばADSLサービスにおける既存の地域電話会社と競争的ADSL事業者の間の競争に代表される。一言で表現すれば、米国では「モード内競争は進んでいないが、モード間競争は活発に展開されている」ということになる。すなわち、競争的なADSLサービスの提供を目指した、コバッド、ノースポイント、リズムズ・ネットコネクショなどの新興事業者は軒並み破綻し(コバッドは再建)、ADSL市場は実質的に既存の地域電話会社の寡占状況を呈している。しかし、ADSLにはケーブル・モデムという強力な競争相手が存在する。FCCが2002年12月に発表した統計によれば、2002年6月末時点の前者の回線数が約510万であるのに対して、後者は約920万であり、米国のブロードバンド市場ではケーブルTV会社が支配的な存在であり、その差はますます拡大する傾向にある。米国ではケーブルTVの加入数が約6,800万に達しており、世帯普及率が65%を超えていることがケーブル・モデムの隆盛の背景に存在する。それにもかかわらず、既存の地域電話会社には厳しいネットワークの開放要件が課されているのに対して、ケーブルTV会社は自由にインターネット接続事業者(ISP)を選択することが出来るなど、ケーブル網の開放義務は存在しない。先日、当研究所を訪問したエリ・ノーム教授(コロンビア大学)にFCCの今回の市内競争政策改訂の見通しを質問したところ、「FCCは地域電話会社とケーブルTV会社の間の規制のパリティ(同一性)を取ろうとしている。両方に規制を課すよりは、両方の規制を撤廃(緩和)する方向を目指すであろう」と述べていた。この答えは、FCCはモード間競争の促進のために、既存の地域電話会社に対する規制を緩和する方向に動くであろうという多くの関係者の見方と一致している。 2月末に明らかになるであろう、FCCの改訂規則の内容が大いに注目されるところである。 日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年2月21日掲載 |
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