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情報通信の新潮流
2003年2月掲載

情報通信の新潮流(第8回)

内外ブロードバンド事情 (4)

滝田(写真)
通信事業研究グループ
チーフリサーチャー
滝田 辰夫 takita@icr.co.jp

 これまでの3回の連載を通じ、韓国、米国、中国のブロードバンド事情をみてきた。今回は日本における最近の動向について簡単に述べ、各国の事情から得られる事をもとに、今後の日本におけるブロードバンドについて考えてみたい。

表:テクノロジー・ライフサイクル・モデル

 総務省の最近の発表によれば、2002年12月時点での日本のブロードバンド加入者数は約781万加入とされている。内訳としては、DSLが五百65万加入、光ファイバーが21万加入、そしてCATVが195万加入である。このうち注目されるのは、光ファイバーの伸びである。2002年6月から12月までで約3倍に伸びており、DSLの伸び約1.7倍を上回っている。日本におけるブロードバンドの進展も韓国と同様にDSLが中心となって始まったが、ここへ来て光ファイバーによるブロードバンドが進展する兆しが見えてきた。

 我が国のブロードバンドインフラ整備は事業者等の努力もあり、着実に進展がしてきていると考えられる。今後ブロードバンドの更なる普及のためには、やはりインフラの整備に加え、韓国でみられたような、利用者に受け入れられる利用方法の開発・普及が必要であると考えられる。日本におけるインターネットの世帯普及率は既に六割を越え、ブロードバンドの世帯普及率も2割に届こうとしている。しかし、「キャズム」の著者ムーアによれば、図に示したビジョナリーまでの二割程度の人々は新しい技術やサービスに対し、比較的すんなりと利用を始めるが、その後の普及のためには次のセグメントである「実利主義者」や「保守派」という人々を取り込む必要があり、その技術やサービスがが信頼に足り、誰もが使うものであるとみられなければ普及しないとしている。今後のブロードバンドの普及にはエンタメ系のみならず、極めて日常的で生活に密着したブロードバンドの利用方法が考えられ、受け入れられる必要があるのではなかろうか。

 また、米国の轍を踏まぬよう、通信分野の規制のあり方について規制機関等は十分に研究をする必要があろう。さらに通信分野の規制のみならず、新鮮かつ多彩なビジネスが生まれるよう、国のビジネス環境を整える必要もあると考えられる。例えば中国の発展形態のように、地域連邦的なネットワーク型国家運営について議論する可能性も否定はできないであろう。

 韓国では、主に失業者によって始められた新たなビジネスPC房が成功し、ブロードバンドの普及につながる一つの要因となった。このように新しいビジネスが自由に生まれる環境こそ、ブロードバンド時代に求められる社会環境ではなかろうか。個人個人の自由な創意工夫が新たなビジネスに結びつき、新たな市場が生まれる。こうした環境整備がなされるのであれば、再び世界的な競争力を取り戻した、「光の国」日本の誕生はそう遠い将来の話ではないかもしれない。

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年2月28日掲載

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