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情報通信の新潮流
2003年3月掲載

情報通信の新潮流(第16回)

サーバー型放送と著作権管理

天谷(写真)
情報流通ビジネス研究G
シニアリサーチャー
天谷 隆治 amaya@icr.co.jp

 デジタル放送ならではのサービスとしてサーバー型放送がある。一月には改正関係省令が公布・施行され、民間規格もまとまったことから、今後は放送局のサービス検討、対応受信機の開発・発売を待つ段階に入った。サーバー型放送は従来の放送イメージを打ち破る全く新しい放送視聴形態を実現する。これまでの放送は配信される番組をリアルタイムに視聴するもので、視聴者は個別にビデオテープなどに番組を録画しタイムシフト視聴を楽しんできた。これに対し、サーバー型放送は蓄積装置を内蔵または外部接続した受信機に対し、最初から蓄積されることを前提に放送局から配信される放送であり、好きな俳優が出演している番組だけを蓄積したり、蓄積後ゴールシーンだけのダイジェスト視聴などができるようになる。

 こうした放送配信が可能になった背景には、デジタル化はもちろんのこと、蓄積装置の大容量化、限定受信者のみが視聴できるアクセス制御の実現、番組内容や視聴条件などを記述するメタデータの導入などがあげられる。そして、最も重要なことは蓄積された番組を違法にコピーして持ち出したり、ネットワークに再配信できない権利保護技術を受信機側に装備することを強制的に課していることである。

 ブロードバンドによるコンテンツ配信はストリーミング型中心で、蓄積型は違法コピーの温床だとしてあまり浸透していない。こうした中で、権利保護が整備された受信機に対しサーバー型放送による番組蓄積がBS・CS・地上波を通じて配信されるようになれば、ブロードバンド側の対応も変わってこよう。

 サーバー型受信機はブロードバンド接続のインタフェースを搭載し、蓄積番組の予約やメタデータ取得などがブロードバンド経由でできるようになるが、その発展系としてコンテンツ自身のブロードバンド配信も可能になろう。受信機にとっては配信元が放送かブロードバンドの違いだけであって、コンテンツの蓄積、再生、権利保護は同様に扱うことになる。ましてや登録した好みの俳優が出演しているコンテンツが自動蓄積されるようになれば、視聴者は蓄積コンテンツを視聴するだけであって、それが放送とブロードバンドのどちらから配信されてきたかは全く意識もしないしする必要もない。

 多チャンネル化された放送局にチャンネルを合わせたり、多数のブロードバンドポータルに個別にアクセスするのとは別に、蓄積されたコンテンツをリモコンひとつで次々に選択し視聴できる利用環境は魅力的でもある。アクセス制御と強固な権利保護のもとに合法的に蓄積されたコンテンツを取り出し、外出先で視聴するというサービスも可能になろう。

 サーバー型放送は通信・放送融合を進める有力なコンテンツ利用形態であるが、サービス内容の検討や通信・放送の補完・連動関係の確立とともに、これまでの放送との違いを視聴者に分かりやすく伝え、いかに新しい視聴スタイルに慣れ親しんでもらい根付かせることができるかが重要となろう。

図:放送の進展

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年3月14日掲載

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