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情報通信の新潮流
2003年月掲載

情報通信の新潮流(第17回)

移動通信サービスの世界動向

佐久間(写真)
取締役、情報流通ビジネス研究G
エグゼクティブリサーチャー
佐久間 信行 sakuma@icr.co.jp

 日本ではカメラ付き携帯電話が20%を越えたように、iモードから始まった携帯電話の多様化が世界一進み、次世代携帯電話、3Gの普及が期待されている。 一方、世界の移動通信マーケットの状況はどうなのか、ここではそれを取り上げてみよう。

 2001年末の世界の携帯電話加入数は、約9億4600万となり年々指数関数的な伸びを示している。一方、固定電話の加入数は10億6100万と未だ固定電話の数が上回っているが、その伸びは年率約6%である。2002年末の統計数値が未だ発表されていないが、伸び率を考えるかぎり2002年末には携帯は固定を追い越し、その差は益々広がるだろう。すなわち、固定電話の普及限界が世帯数に対応するのに対して、携帯電話は個人であるからである。 次表は国別の携帯電話の加入数を比較したものである。

表:携帯電話加入数上位10カ国(2001年末)

 大きなエポックは、2001年に中国が米国を抜いて世界最大の加入数を保有するに到ったことである。中国も最近は成長の鈍化を見せてはいるが、いまだ普及率は十二%程度であり、世界のマーケットの牽引役をつとめている。なお、中国は現在2社による寡占状態にあるが、通信産業を4社に再編したことから、将来はさらに熾烈なマーケットに成長するだろう。

 携帯電話の使われ方を見てみよう。
電車の中では、若者は「ケータイと親指」の世界にひたすら没頭している。これは電車内など公共の場で大声で通話しないことなど、マナーの向上が叫ばれた効果でもあるだろうが、もともと日本には、ポケベルの時代からメッセージ文化が存在しており、これが「ケータイ」により更に花開いたと見るほうが正しいだろう。
現在NTTドコモなど日本の移動通信事業者の収入の約二十%がメール、ウエブの閲覧、ゲームなど「非音声」通信からきている。一方、音声による通話は年を追って減少しており、非音声による収入が全体収入の減少を食いとめている現状だ。今後は、画像通信など、データ伝送量の多い非音声通信の拡大が事業展開のために必須になってきている。
欧米にはこのような「ケータイ」によるカルチャーは存在していなかった。欧米においても加入数が増えるに従って加入者あたりの収入が減少し、その穴埋めをするiモード型のサービス展開が必要になっており、日本に追いつけ、追い越せ、のムードになってきている。欧米でも、また中国を始めアジアの国々でも、カメラ付き携帯の導入が始まっており、日本製携帯電話機がうけている。

 本年から英国、イタリア、オーストラリア、韓国など、世界のいくつかの国で、NTTドコモ及びJフォンが採用しているW_CDMA方式の3G導入が始まる。日本の通信事業者のグローバルなビジネス展開が活発化するとともに、日本の携帯電話機製造メーカの最新端末がトランスグローバルに花開く年になって欲しい。

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年3月17日掲載

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