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2003年3月掲載 |
情報通信の新潮流(第20回)
海外におけるモバイル・コマースの動向移動・パーソナル通信研究Gリサーチャー 岸田 重行 |
日本ではauが、携帯電話を使って店頭でクレジットカード支払ができるサービス「ケイ・クレジット」のトライアルをこの三月から開始予定である。またNTTドコモの最近の機種には赤外線通信機能が搭載されており、これを使って店頭で買い物ができるようになる取り組みが進んでいる。こうしたサービスは「モバイル・コマース」と呼ばれるが、ここでは海外での動向について取り上げる。 「モバイル・コマース」の発祥である欧州では、一九九七年頃からこうした取り組みが始まっている。2000年には推進団体が相次いで設立され、その後も「ペイサークル」が設立された。また今年二月には、携帯電話事業者の主導で「モバイル・ペイメント・サービス・アソシエーション(MPSA)」が設立されている。携帯電話を取り巻く業界での動きは止まっていない。 しかし、市場における普及は失速気味である。今年の1月には、欧州五カ国でモバイル・コマース・サービスを提供する事業者「ペイボックス」が、三カ国におけるサービス提供から撤退を発表した。残る二カ国においては、別会社による事業買収などにより継続する。ペイボックス社はソリューション提供企業として再出発する。 一方アジアではどうか。モバイル・コマースへの通信事業者の取り組みとして、注目すべきは韓国における動向である。 韓国では、モバイル・コマースをめぐり2002年後半から大きな動きがあった。韓国では携帯電話事業者の競争が激しく、それがこうした新サービスを開発・導入する原動力になっている。 韓国携帯電話市場で約半数の加入者シェアを持つSKテレコムは、モバイル・コマース・サービス「モネタ」の積極的な導入を進めている。店頭のPOS端末での支払が携帯電話でできる。赤外線を使った技術方式を採用している。 同社は、ジェオンブク銀行のクレジットカード事業を買収し、クレジットカード機能を携帯電話サービスに取り込むべく動いた。またビザ・インターナショナルの協力も得て、さらに、第三位携帯電話事業者のLGテレコムともこの分野で提携した。 一方、ライバルである第二位事業者のKTFも、同様のサービス開発を進めた。こちらは非接触ICカードによる方式を採用し、マスターカードがサポートについた。このように、韓国では携帯電話事業者を軸とし、クレジットカード業界がそれに絡んだ構図となっている。 携帯電話事業者が主導の動きが目立った昨年であるが、実はベンチャー企業が開発したシステムもすでに商用化されている。Harex InfoTec開発の「ZOOP」は赤外線通信を利用したシステムであるが、すでにLGテレコムとKTFが対応携帯電話機を発売している。 モバイル・コマースの世界的な普及には、市場での成功実績が必要である。欧州での成功が期待薄となった今、韓国というホットな通信市場で、モバイル・コマースが普及するかどうかが注目される。 日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年3月20日掲載 |
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